連鎖の切れた空間に浮遊す。

あらすじ
20歳の夏。大学二年生の「僕」は、まるで生ぬるい水の中に沈んでいるかのような、停滞した日々を送っていた。夢も目標もなく、漠然とした将来への不安だけが、天井のひび割れのように心に広がっていく。特に、小学校時代の幼馴染との間にできた深い溝が、僕を他者との親密な関係から遠ざけ、見えない壁を築かせていた。僕は、自分が世界の回路から外れてしまったような、奇妙な疎外感を抱え、ただ浮遊しているだけだった。

そんな閉塞感に耐えきれなくなったある日、僕は理由もなく借りたレンタカーで、眼下に街を見下ろす高台へと辿り着く。そこで、まるで最初からそこにいたかのように現れた「不思議な男性」との出会いが、僕の日常に微かな亀裂を入れる。彼は、僕の心の奥底に潜むトラウマや、人との間に築いた壁を見透かすような言葉…続きを読む