サーカス

少ない荷物の中に隠し持っていたナイフを取り出すと、よく磨かれた刃が炎を映してきらめいた。
美しいものに触れて尽きることは、きっと幸福に違いない──。

刻々と近づく冬を前にした密かな決意は、唐突な闖入者によって霧散した。
少しばかり延びた日々が青年に、少年に、街にもたらしたものは。



この作品は2012年6月、オスカー・ワイルド「幸福な王子」に寄せて執筆・発表したものです。
公開に当たり、一部文章を修正しました。