狂気猫
テマキズシ
狂気猫
ああ…?なんだよクソガキ。ここはガキの来るところじゃねえよ。なに?ここはお前らの秘密基地だと?
ここは俺の家だ。ちょっとボロいがな。ある事があって仕事を辞めてからこの山小屋に住んでんだ。分かったらとっととこの場所から去れ!早く!!!
………ああ?何で仕事を辞めたかって?…おい。駄目だ……早くか……えれ……あ………あ…。
そうだな。あれは今から数年前の話だ。どうしたガキ?話してくれるの?だって?うるせえなそういう気分になったんだよ。
俺は大学生だったある日、それはそれは美しい美女に会ったんだ。
黒く美しい髪の毛。きつく美しい、まるで猫のようなツリ目。高身長の和服美人。猫好きらしくて毎日のように黒い猫を抱きかかえていた。俺はそらもう一目惚れして口説きに行ったもんだ。まあ大爆死したがな。
それならは毎日のように彼女に会いに行ったよ。ストーカーみたいだって?そうだよガキ。そのとおりだ。俺はあの人のストーカーだった。でもよ、毎日良い所になると猫が俺を遠ざけようとしてくるだ。
ニャーって鳴いてな。それを聞いた彼女はご飯の時間やらトイレの時間とか言って家の中に入っちまった。
そんな生活が3年程経った頃だな。俺は一向に進展しない彼女との関係に腹が立っていた。
その時よ、ふと思ったんだ。
あの猫さえ邪魔しなければ……とな。
俺達は愛し合っている。それをあの猫が拒んでいる。だったらあの猫を殺しちまおう。それが俺達の幸せに繋がるんだ。バカな話だが昔は本当にそう思っていたんだ。
それからの行動は早かったよ。俺は彼女の家に侵入すると寝ている猫を強奪した。
呑気に毛布にくるまっていたから運ぶのは容易だった。俺は遠く離れた山奥まで移動し猫を殺そうと毛布をめくった。
その時俺は気づいたんだ。この猫が死体だってことに。
もうミイラになっていた。干からびていてボロボロだ。今思えば俺は猫を丸まった状態でしか見ていなかった。女が深く抱いていて分からなかったんだ。その猫が死んでいることに。
最初は移動の際にどっかで死んだんだと思った。でも猫の死体は明らかに数年は経っていた。そうでなければおかしい損傷具合だった。
待てよ…?じゃあ今まで俺の邪魔をしていた鳴き声はなんなんだ?俺がこの猫が生きていると思った理由は鳴き声だ。ずっと俺が話しているとニャーと鳴いて邪魔していたからこの猫は生きていると思ったんだ。
でも猫は遥か昔に死んでいる。
じゃあよ。あの時聞こえた鳴き声は誰が発したんだ……?
ニャー
その時、直ぐ側から猫の鳴き声が聞こえてきた。俺はブルブル震えながらそちらを見たよ。
そこには彼女が居た。彼女は猫の死体を助けること無く、ただ俺をじっと見ていた。そして俺は見てしまった。
彼女の目は猫の目だった。
俺は怖くて怖くて…。猫の死体をその場に放置して逃げ出したよ。
走って走って走って。頭が痛くてしょうがなかった。恐怖で全身が震えていた。それでも俺はひたすら逃げて近くの公衆トイレに入った。
だいぶ逃げたからもう大丈夫だ。俺は自分を慰めた。そして落ち着かせる為に顔を洗おうと洗面台へと向かった…………そこで俺は気づいてしまったんだ。
俺の目も…彼女みたいに目が猫になっていることに。
ま、そんな事があった訳だ。それで俺が仕事を辞めた理由はだな…。
おっとクソガキ。頭痛くなってきたようだな。これじゃ、説明するより見た方が良いな。
先に言っておくと俺は拒もうとしたんだぜ。お前がクソガキすぎて何でもかんでも聞いたりしようとするからこうなるんだ。大人しく帰っていればこうはならなかったのによ。
ほら。鏡だ。これでお前の目を見てみろ。
お前の目も猫の目になってるからよ。
ニャー
狂気猫 テマキズシ @temakizushi
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