第12話 カフトリー・リュビン

 アキトはレーダーを見ていた。彼らの前後に無数の戦闘機の反応がある。


「いや、俺達の勝ちだ」


 


 ミグ31ファイヤーフォックス戦闘機が、超音速で彼らに接近していた。ファイヤーフォックス戦闘機が編隊を組み、無数の円盤に対空ミサイルを浴びせる。




「こちらカチューシャ隊。間に合ったようだな」


 大量の戦闘機がこの場所に集まっていた。ジェットエンジンのけたたましい音が鳴り響く。


「カタナ隊。現着」「レッドフラッグ隊!」「リヒトホーフェン隊。攻撃開始」




 宇宙艦隊を叩きのめすように現れた複数の戦闘機隊が円盤と宇宙艦隊に向けてミサイルや機関砲をお見舞いしていった。趨勢はたちまち覆り、世界各国の艦艇もちらほらと水平線上に姿を見せ始める。




「こちら潜水艦改め潜水空母ディアモン。ブラディオンは本艦へ着艦せよ」


「了解!」


 ブラディオンは指示のままに海面上を低空飛行する。しかし、それを逃す宇宙艦隊でもない。




 宇宙戦艦はモーターをギリギリと駆動させて大砲を指向し、ブラディオンへと艦砲射撃をした。風を切り突き進むブラディオンに大量の砲弾が迫る。


「カフトリー。砲撃だ。こっちに飛んでくる!」


 アキトはその様子を見て叫んだ。




 次の瞬間、砲弾の爆発がブラディオンを包み込んだ。機体において鳴りうるありとあらゆる危険信号が鳴った。ブラディオンのエンジンが文字通り火を噴く。


「駄目だ落ちる。アキト、ハッチ開いて!」




 アキトが言われるがままにブラディオンのハッチを開き、顔を出した。すぐ先にディアモンが居る。しかしリュビンの見るモニターは真っ暗だ。


「ディアモンだ!」

「ぶつからない?」


「それは大丈夫」


 徐々に海面へとブラディオンが迫る。


「着水する!」


 アキトが機体の中に飛び込み、自身の座席についてシートベルトを締めた。




 すぐにブラディオンと中の二人は水面へ叩きつけられた。機体はあちこちがひしゃげるが、二人は開けておいたハッチからブラディオンから抜け出した。彼らの目の前には改装を受けたディアモンが居た。


「クレーンでブラディオンを引き上げる。君たちは乗ったままでいい」

「わかりました」


 ディアモンからクレーンが伸びてブラディオンを持ち上げ、艦の上部に増設された格納庫に収納した。格納庫の中から艦内へと二人は招き入れられる。


「元々はヘリでも乗っけるつもりだったところだが、見事に空飛ぶ円盤が乗ったな」


 ロマン艦長はそう言いながら遠隔操作でシャッターを閉める。


「さて、ブラディオンの修理をしてもらおう。ベント開け、微速潜行」



 リュビンが自身の汗を拭い、得意満面といった表情でロマン艦長の前に立った。


「また出撃すればいいんだな?」

「ああ、だが修理できる頃には戦いは終わってる」


「じゃあ何をするんだ!」

「人命救助さ」


 



 ブラディオンの機関砲がワイヤーフックに取り換えられ、多くの円盤や宇宙艦隊が沈む海へと駆り出された。沈んだ円盤の一つにフックが引っかけられ、それが巻き取られて円盤が持ち上がる。




「人はいない。あっちに預けよう」




 最初にブラディオンが向かったのは揚陸艦トリポリであり、その広い甲板には既にそれなりの数の円盤があった。




 巨大な航空母艦福建や護衛艦かがなども艦載機をオーストラリア空軍に預け、回収された円盤の輸送を手伝っていた。


 海上を官民問わずヘリコプターが飛び交い、海に沈んだ航空機や円盤を取り出す。波音を立てながら円盤や補助艦艇などが持ち上げられ、時折中から人間が安どした様子で顔を出した。


「このペースだと明日に入った頃には全部回収できるってさ」


「意外と早いもんなんだなあ」


  


 そして日は暮れ、救助も終えられた。まあほんの少し長引いた訳だが。




 一仕事を終えた艦隊と人々に朝日が差し込んだ。


「ただいま!」


 何度目かになるブラディオンのディアモンへの着艦が行われる。


「お帰り。さて……」


 ディアモンの甲板はブラディオンの格納庫で手狭になっていた。そこへやってきた空母エンタープライズがタラップを降ろす。


「楽しもう!」




 二人と、ディアモンの乗員達はエンタープライズ上でのパーティーに招かれた。二人の目には各国、各部隊の、同じく一仕事を終えた人々が写る。


 食べ物がそれなりに持ち込まれ、ディスコミュージックとともに踊っている者もいた。陸海空自の自衛官が入り乱れて大鍋にいれたカレーを皆に振舞っているし、米海軍の人たちは映画のオープニングを再現しようと、エンタープライズに不時着した空軍機の前で遊んでいる。


 救助されたり、地球側に付いたゼゴー共和国の兵たちも周りの地球人と同じように楽しんでいた。




「……カフトリー。円盤で登場するくらいでよかったんじゃない?」

「賛成!」


 ディアモンの乗員達に許可をとってしばしの間抜け、円盤でエンタープライズに再び降り立った二人は、先ほどの十数倍の注目を浴びて熱烈に歓迎を受ける。


「バーベキューだ! 肉食おうぜ!」「食わせて良いのか? 肉」「健康なもんがいい。発酵食品だろ。キムチだキムチ」「ローストビーフ。間違いないな」


 戦闘機トムキャットがエンタープライズの艦橋をかすめて飛んでいった。


「あいつらやっていきやがった!」「スクリーン出せ映画見るぞ」「文化交流だ文化交流!」「宇宙の映画なんて見たことないだろ? 持ってきたぜ」「そらお互い様だぜ」


 


 そこらへんの箱を使ってできた即席のシートにアキトとリュビンを中心にして人々が座った。


「アキト、地球の映画も面白そうだな」「きっと面白いよ」


 映画が始まる。あらすじを教える字幕が展開された。

「時は内乱の嵐が吹き荒れる中……」



 


 しばらくしてアキトは普通の生活に戻ることになる。さて、重要な進路のお話だと言わんばかりに学校からもらった二枚のプリントを並べて凝視した。


 どちらも今年度の進路の選択内容のプリントである。




「おかしいな。生物選択者が先週のプリントだと72人、昨日のだと73人だ。ここの期間で変更はできないし誤植かなあ。クラスメート一人はおっきい違いなんだぞ」


 天井を仰いで彼がそう呟いたところで玄関のチャイムが鳴った。明人はインターホンを覗き込む。そこには見覚えのある笑顔が写っていた。




「ホームステイしにきました。カフトリー・リュビンです……アキト、一条明人さんのお宅で間違いないですか?」




 アキトは玄関に向かって突っ走り、ドアを開けた。

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アフター・レボリューション~エイリアン大開戦~ 机カブトムシ @deskbeetle

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