円環は、廻ります。今なお、廻ります。
- ★★★ Excellent!!!
本作の作者様は一作毎に実験を試みます。失敗する恐れもある、この行為は冒険と呼ぶべきです。作者様は、血筋ではなく自らの勇気を支えにして。
本作は、数多くの模倣者を生んだループ展開に冒険を持ち込みます。先人が積み重ねた通りに、主人公達はループから抜け出せるのか。結末まで読み終えた後に、この問いは答えを出せるのか、読者が問われます。
作中に大量の歴史上の事実が挿入されます。人間の歴史は同じ旋律を編曲して繰り返すと語られます。過去は今なお過去になっていない、この矛盾に見えて現実を突きつけられます。
歴史は廻りますが、個人は直線と信じて生きて世を去ります。果たして、個人が歴史の円環を背負えるでしょうか。背負ってなお正気を保てるでしょうか。
円環は、廻ります。今なお、廻ります。歴史を通して進歩したと信じる私達は、今の世界を見て、本作を読んで、未だに円環の上を歩いていることを知ります。