灰降る国で、君を呼ぶ

目覚めた異世界は、空から灰が降る滅びかけた王国だった。
橘真希（たちばな・まき）は、かつて教壇に立っていた元教師。事故を経て召喚された彼女は、亡き王の遺言により、言葉を失った王子・リオルの“継母”として迎えられる。

しかし、リオルは誰の声も受け入れず、ただ世界に背を向けて生きていた。
かつて届かなかった声、抱えきれなかった生徒との記憶――真希は「もう一度だけ、届くまで声をかけよう」と決意する。

これは、母ではない者が、母であろうとした物語。
罪を背負い、“名”を奪われた少年に、再び名前を呼ばせるために――
そして、自らの“罪”にも名前を与えるために、歩き出す。

最後の一言が、世界を変える。
灰降る国で、君を呼ぶ。