死角

Kei

死角

「防犯カメラには必ず死角になる場所があるんだ」

先輩はそう言いながら動画をチェックしていた。


「俺たちセキュリティ業者にとって、そういう場所を残してしまうのはご法度なんだ。わかるだろ?」


「万が一、そこを賊に突かれたらどうなる?面目は丸潰れだ。これまで築いてきた信用も一夜にしてなくなっちまう」


「おまえも知っての通り、うちの会社は創業以来セキュリティ事故を起こしたことがない」


「だからこれからも起こしちゃいけない」


「ここだ」

先輩は画面の一点を指さした。


「ここのカメラはやや上向きになっている。だから壁際に屈んで進めば映らずに非常階段に辿り着ける」


「お前はこれを見落としたんだ」


「強盗にやられたことは取り返しがつかない。しかし信用を失うわけにもいかない」


「責任者の死亡保険金で損害を補填してくれれば表沙汰にはしない、と先方は言っている」


「それで話がまとまったんだ」


先輩はそう言いながら、縛られて猿轡を噛まされた俺に近づいてきた。

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死角 Kei @Keitlyn

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