三題話「つる草 牛飼い 万屋」

ねこすず

とある店での他愛の無い話

「ごめんください。」

男は入り口で言った…

「ごめんください。おやっさん居ますか?」

大きめな声で男が再度言った。


「あー、はいはい。しばしお待ちを」

と言いながら初老くらいの主が現れた。

「おや、近くの牧場の旦那かい。」

男を見てふと言う。そして、

「誤用の方は何で?」

と男に尋ねた。


「ちょっとフォークが必要になってね」

と牧場の旦那が言った。


「フォーク?家は万屋だが農具のであって、食器は扱って無いんだが…」

万屋の親父は答える。


「いえ、干し草とかを扱う方のですよ。つい1月ほど前にも買った…」

牧場の旦那は言う。


「ああ、ピッチフォークかい、もうダメになったのかい?そんな粗悪品では無かったはずだが…」

と万屋の親父。


「いえ、ちょっと倉庫の脇に立てかけて置いたところに、朝顔がつるで巻き付いちまって、つぼみが膨らんで明日にも咲きそうなんですよ。」

と牧場の旦那。


「朝顔につるべ取られて…とかあったな。しかし、何だな、お前さんにそんな乙女っぽいとこがあっただなんて。」

と万屋の親父はからかう。


「いや、私は朝顔が好きなんですよ。」

牧場の旦那は言い訳になって無い事を言いながら頬を赤らめていた。

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三題話「つる草 牛飼い 万屋」 ねこすず @nekosuzu123

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