5. 理想は現実

 まずは結論から。

 『ChatγGPT』なんてものは、存在しなかった。


 いや、あるっちゃある。


 でも、その「技術」が、まるでデタラメだった。


 というか……


 超絶アナログだった。


 『ChatγGPT』の正体は、生身の人間だった。


 ダ・ヴィンチ顔負けの超絶博識完璧人間が、AIのフリをして、利用者の問いに答える。


 めっちゃ給料いいらしい。


 で、偶然、私のことが気になっていたその人に、というかその人が私のことを気にしていたこと自体が偶然なんだけれど、私の理想の人を演じる役が回ってきたのだそうだ。


 つまり私が描いていた理想は……




 はじめからずっと、

 現実だった。

 



 理想だと思っていた現実を再認識した。


 偶然なんかじゃない!


 必然だったんだ!


 私たちはひどく興奮した。


 手を取り合って向き合った。


 もう今は一方の手は角張った金属板ではない。


 胸像トルソーと胸像が距離を詰める。


 互いに吐息が漏れる。


 現実の、その人の吐息が、私の鼻にかかる。


 ……わぁ(チョイクサ⁉︎)


 と思った時にはもう、唇どうしが触れていた。


 えーっと……


 レモン味、とはいかなかった。


 その人とのキスは、さほど気にならないくらいにだけれど……





 ──ちょっぴり人間らしい香りがした。



   〈完〉

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未来、味蕾、わぁ。 加賀倉 創作【FÅ¢(¡<i)TΛ§】 @sousakukagakura

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