美しき夜の調べで紡がれる、残酷な世界

じつに隙のない物語だ。ミステリーのように精緻に組み立てられているというのではなく、あらゆる読み方を受容できるという意味で。実際に、これほど読み手によって感想が別れる作品もないのではないかと思う。
自分はコミュニティ内で知らずにいけにえとなっている者への警鐘と受け取ったが、これとて自身の個人的な自戒の念が反映されただけかもしれない。そしてこのような読み方を許してくれるのは、作者の柔軟性に富んだ文体のなせる業なのだろう。
この作品を読んであなたが感じたこと、それが今あなたが一番関心のある事柄だ。

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