概要
零落し果て失い果て、魂すらも崩れた者が、怖ろしくも哀しく踊る、その暗闇
天下無双の男になる ――― 希望と自負に満ちみちて渡米した兄は、廃人となって帰参して。
うす暗い裏手の離れにもう一年も、蟄居しているのでした。
KAC2025 第5回、三題噺「天下無双」「ダンス」「布団」参加作品です。
うす暗い裏手の離れにもう一年も、蟄居しているのでした。
KAC2025 第5回、三題噺「天下無双」「ダンス」「布団」参加作品です。
おすすめレビュー
新着おすすめレビュー
- ★★★ Excellent!!!泥の沈む沼
武江成緒さんのことを、わたしは「無冠の帝王」と呼んでいる。※受賞歴はお持ちである。
浮世の栄誉なるものに縁はなくとも、我ここに在りと燦然たる存在感を放っている書き手さんだ。
その作風はホラーではなく『怪奇』と呼ぶのが相応しい。摩訶不思議や、あやかしではなく、怪奇。
巧い人間など掃いて捨てるほどいる。
その中にあっても、砂利の中に混じった黒い金剛石のような方なのだ。
積み重ねてきた想像力から一滴一滴と摘出される黒い文章。
そこには奇妙な魚が、幾重にも沈殿した泥の奥から硬い鱗をぎらつかせてこちらを見ており、退化したその薄灰色の眼玉で不意にぬっと威かしてくる。
もやもやと立ち…続きを読む