また、必ず
呂兎来 弥欷助(呂彪 弥欷助)
また、必ず
「戦争孤児なんだって?」
「珍しいことじゃないだろう」
ヒソヒソと、多様な言葉が通過していく。そのどれもに反応する気が起きなかった。
「
反射的に顔が動けば、『今から相方だ』と紹介された気が良さそうな青年がいる。長い髪をまとめている姿は、貴族特有の決まり──髪の毛を一定の長さ以上に保たなければならない──に従っているというよりも遵守する手段に思えた。ていねいにピンでとめ、激しい動きに耐えられるよう固定されているから。
「今日は上がりだ。部屋を案内するよ」
そういえば、部屋は相方と同室だと大臣から聞いていた──と
「年が倍違うけれど、俺のことは呼び捨てでいいからね」
『呼び捨てでいいから』と言われたところで──何という名だったかと考えるほど、
今日から傭兵となり、剣士の稽古場へ来て大勢の者の名を聞いた。『だから』だと言い訳をするくらいの方が、かわいげがあるのかもしれない。
『今から相方だ』
わざわざそう紹介を受けた。いつ『生』の保証がなくなるかもわからない、そんな立場で、
「よく、そんな風に笑える」
という思いが膨らんで──『相方』の名を、耳からこぼれさせたのだ。
「ん? ああ、初日だから疲れたよね」
「覚えられた?」
無関心に首肯すると、『相方』はよかったと言うように微笑む。そして、
「
と、大臣があらかじめ運んできたと告げた。
一通りの物の位置の確認と、就寝準備を終えたころ、相方がベッドに入ってこう言った。
「布団に入ったら、『
確かに、
『相方』の発言を疑うわけではない。だが、
「ね?」
フカフカとする布団に身を委ねた
「そうだね」
とつまらなさそうに言って、頭まですっぽりと隠した。
数日が経っても、『相方』は部屋で
──稽古中はおしゃべりでもないのに。
多少うんざりしていた
まず、名は
中央より東側には、剣士の名家と謳われた城があった。だから、その城を越えて東側に位置する
最東端には、港街がある。港街まで戦いの火が落ちてしまえば、貿易が──食料や日用品など、あらゆる物の流通が数多く止まる。
だからこそ、大陸内では『教育の一環』として、『最上位の城に仕えさせる』のは、ちょうどいい口実なのだ。嫡子を、少しでも戦火から遠ざけるために。
「
「まぁ……」
と答える。
「でも、練習相手を頼んでも……女性役はできないでしょう?」
と眉を下げて更に聞いてきた。それに対し、
「できるよ。兄弟でも練習したから」
そっけなく
「兄弟がいたのか?」
「ああ……長男がね……」
「ん? 『兄』って呼ばないの?」
「同い年だから『兄』も何も……」
途端、
「ごめん、もしかしたら……思い出したくないことを、思い出させたよね……」
「別に構わないさ」
『長男は生きていると思うし』と、本心を返す。しかし、それがまた
「おやすみ」
布団をかぶれば強制的に空間は閉ざされ──
数年が経ち、
生家に戻ったわけではない。
何年経っても、当時の一部始終を
「あのとき、
月命日にはなるべく慰霊碑に足を運ぶ。
そうして、心に刻む。慰霊碑に眠る、皆の無念を。
「また、必ず来るよ」
また、必ず 呂兎来 弥欷助(呂彪 弥欷助) @mikiske-n
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