糾う縄の如く二つの怪異が絡むとき、捜査一課怪異専従、鏡堂班が動き出す!
- ★★★ Excellent!!!
人知を超えた犯行を繰り返す者を、人知を尽くして捜査する刑事達の物語です。
鏡堂達哉と天宮於菟子の二人の刑事が奇怪な殺害方法の事件を捜査する〝鏡堂達哉怪異事件簿〟の第二章と位置づけられる本作。
今回は古代中国の伝説の怪異。饕餮と檮杌の二凶に端を発する事件です。
シリーズ全体と同じく本作には、頭脳明晰な探偵役も、全てを見通す異能の捜査官も登場しません。
刑事たちは事件関係者の関係を洗い出し、聞き取りを行い物証を集めます。
集まった情報の疑問点へ専門家の知見を求め、捜査会議で討議し連携する。
至って正当な捜査。地道な手段で、犯人へ迫ります。
そしてこの正当な捜査こそ本作の醍醐味であり最良の要素なのです。
社会を形成する動物である人間。
その最大の能力は〝連携すること〟
力を合わせることです。
人間を超越した能力を持つ犯人に対して、確固とした意志のもとに複数の捜査員が一つ一つ情報や知見を集め、討議し、真実に迫る。
集団の能力を統合して属人的な異能を捉える状況。
普通の人間達の積み重ねた作業が驚異の異能を凌ぐ瞬間。
これこそ本作の真骨頂だと私は考えます。
怪異を捜査する物語は幾つもあるでしょう。
その中にあって本作は怪異に対して常套的な手法を用いて事件を解決する。
そんな稀有な作品なのです。
皆さまへ、御一読をお勧めします。