【怪談実話】短編怪談『溶けた顔』
有野優樹
車から見えた景色
「今はもうわからないんですけど、高校生の頃は見えちゃってたことがあって」
喫茶店の店員をやっている女子大学生のRさんから聞かせて頂いた体験談。
美術部に入っていたRさん。
ある日の部活動。美術室の黒板近くで油絵を描いていたとき、肩をトントンとされたので「何?」と振り返ると「え?」と、美術室の一番後ろに居た友達に反応された。
その反応した友達に肩を叩かれたと思っていたので
「いま、肩を叩いて‥」
と言いかけたが‥ありえない。
なぜなら、一番後ろに居るのだから。
肩を触ってから後ろに行ったとしても、走っていく姿が見えなければおかしい。
また別の日には、自転車に乗っていたときに足が重くなったのでペダルに視線を下ろすと、足首を掴む手が見えてしまったこともあった。
不可思議なできことだったが、日常的に何度も見る機会があったので、ひとつひとつをそこまで気にしていられなかった。
そんなある日、“気にしていられない”ではすまないことが起きてしまった。
父親の実家がある九州の某県に行く事になったときのこと。
空港ついた時には午後十時をまわっていた。
空港から車で一時間ほど行ったところに家があるので、旅の疲れもあってかRさんは後部座席で船を漕いでいた。
何分か経った頃、ふと目が覚めた。
車は走り続けている。
なんとなく窓の外に目をやると、白い足が二本立っているのが見えた。
信号待ちをしている人がいるのかと思いまた眠りにつこうとしたとき、違和感を覚えた。
車は走っているのにも関わらず、足は見え続けているのだ。
立ち止まっている人が居たら、通り過ぎなければいけないはず。
では、なぜ見え続けているのか。
眠りかけた目が一気に覚めてしまい思わず後ろを見た途端、足の正体が居た。
「男か女かわからなかったんです。顔がグチャッてなってる人が張り付いててビックリして声を出してしまって。家族は見える事を知ってるので、あれ?もしかして見ちゃったの?って」
反射的に目を背けたが再び後ろに目を向けると、ガラス越しには通ってきた車道と夜空が広がっており、さきほどの姿を見ることはなかった。
具体的な名称は避けるが、その姿を見た場所は落城した歴史のある城跡付近だったという。
Rさんの体験談はここまでだが、この話にはまだ続きがある。
体験談を聞かせていただいたあと、Rさんに筆者の金縛りの体験談を話した。
「わたし金縛りの体験はまだなくて。一回なってみたいんですよね」
「今はこうやって話せてますけど、なってるときはめちゃくちゃ怖いのでならないほうがいいですよ」
この話をしてから一週間後、Rさんと話す機会があったのだが
「聞いてください!実は初めて金縛りにあったんですよ!体が動かなくなってめちゃくちゃ怖かったんです!夜中目が覚めたときに金縛りになって怖い怖いと思ってたら、お腹のあたりがぐっと重くなって。見てみたら、大きな黒い塊が乗ってたんです!」
とやけに高いテンションで喋ってくれた。
怖い話をすると寄ってくると言うが、その迷信はあながち嘘ではないのかもしれない。
【怪談実話】短編怪談『溶けた顔』 有野優樹 @arino_itikoro
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