繰り返す悪夢の中
水帆
血に染まる悪夢
あの夢を見たのは、これで9回目だった。
真っ赤に染まる手、動悸。
私はもう、何もかも分からなくなってしまった。
あの夢を見たのは、これで8回目だった。
真っ赤に染まる手、動悸。
奴がどんな顔をしていたのか、もう思い出せない。
あの夢を見たのは、これで7回目だった。
真っ赤に染まる手、動悸。
部下たちはどうなったのだろう。死んだのか。
あの夢を見たのは、これで6回目だった。
真っ赤に染まる手、動悸。
すべてを手に入れられると思った。
きっとそれが、間違いの始まりだった。
あの夢を見たのは、これで5回目だった。
真っ赤に染まる手、動悸。
あの夢を見たのは、もう4回目だ。
真っ赤に染まる手、動悸。
切りつけられた痛みは、もう感じなかった。
あの夢を見たのは、3回目だった。
真っ赤に染まる手、動悸。
私はあの4人が憎い。
また、あの夢を見た。
真っ赤に染まる手、動悸。
剣が重く私の身体を貫いた瞬間、もうだめなのだと悟った。
あの夢を見た。
真っ赤に染まる手、動悸。
私は玉座から崩れ落ちた。
私が玉座から崩れ落ちた後、ローブに身を包んだ老齢の男が言った。
「勇者殿……本当に、生かしておくんですか」
「ああ」
勇者と呼ばれた男は、うつ伏せに倒れた私の横に片膝をついた。
「この世界に来る時に、俺に力を授けた女神が言っていたんだ。――ある世界で死んだ者が、前世の記憶を持ったまま他の世界に転生してしまうことがあると」
部下たちの報告によれば、この男は異世界からの転生者ということだった。
この男のいた地域では連絡がつかなくなった部下が数多く、当然警戒していた。
しかし内心では、『たかが人間』とも思ってもいた。
私は愚かだ。
私は、私自身の油断に足元を掬われたのだ。
戦いの中で辛くも若い戦士の男と僧侶の女は仕留めたが、この男と老齢の賢者は何度でも立ち上がった。
私は動くことができないまま、口から血や何かどす黒い液体を垂れ流しながら、牙をギリリと噛み締めた。血溜まりの中に私の折れた翼が千切れて落ちているのが見えた。
「……こいつはこれまで多くの魔物を操り、人間を謀り、残虐に殺し、その勢力を拡大して五百年もの間、大陸を脅かしてきた。こいつが死ねば、どこかの世界に転生する可能性がある。死なせてなどやらぬ」
勇者と呼ばれた男が、立ち上がった気配がした。
「魔王ペザデーロ。お前は、永遠に続く悪夢という牢獄の中で、生かしておく」
勇者が合図のように振り返ると、老齢の賢者が何か唱え始めた。
繰り返す悪夢の中 水帆 @minaho_ws
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