夢の中から出られない

星見守灯也(ほしみもとや)

夢の中から出られない

 あの夢を見たのは、これで9回目だった。


 目覚まし時計の音がする。

 起きあがってあたりを見回す。なにも変わらない部屋。飛んで行った枕、乱雑に積まれた衣服、出しっぱなしの食器。おれは首をかしげる。なにと比べて変わっていないと思ったのか。とりあえず立ちあがって、カーテンを開ける。

 夢を見た気がする。なんだっけ。……忘れちゃった。

 そこに置いてあったシャツをつかんで着替える。あくびをひとつ、顔を洗いにいく。

 たしかに夢を見たんだよ。覚えていなきゃと思って、それなのに思い出せない。

 簡単にトーストを焼き、なにも塗らずにほおばる。

 なんだったかなー。気になる。ここんとこ、そんな日が続いている気がする。夢を見たとき、「あ、これ前に見たな」って思うのだ。思うのに、きれいさっぱり覚えていない。

 おれはさすがに食器を洗うことにした。まだ水が冷たく、お湯に切り替える。ああ、せっかくの休日だというのに。そうか、休日か。たまにはどこかに出かけようか。


 道を歩けば桜が咲いていた。オレンジ色がきれいだ。その桜並木を歩いていくと、スーパーの横の電信柱に矢印がかいてある。「こちら」とだけあるその矢印の先を見ると、狭い路地があった。休日だし行ってみるか。

 のれんをくぐるとそこは商店街だった。そこの人々は脇に「だるま」を抱えていた。そう、あの赤くてまるいアレだ。だるまかあ。重くないんだろうか。あの人のだるまは目が入ってない。こっちのだるまには立派なカイゼルヒゲがついている。

「お兄ちゃん」

 振り返ると、小さなおばあちゃんがだるまを抱えていた。

「ええと、むこうから来たんですが……」

 目を向けた先には草原があった。そっか。ここはもうずいぶん昔に草原になってしまったんだった。惜しいなあ。以前はここにオフィスビルがあって、一人焼肉を楽しめたのに。残念だという気持ちを抱え、おれは草原を行く。

 なんか変じゃないか? ひっかかるような気がしたが、よくわからない。よくよく思い返してみても、なにもおかしいことなどないのに。地面に埋まってるスマホだって、充電しているのだろう?


 そこでおれは目を覚ました。目覚まし時計の音がしていた。

 10回目の夢を見た気がした。

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夢の中から出られない 星見守灯也(ほしみもとや) @hoshimi_motoya

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