トリの降臨
よつ葉あき
妖精
私が通う
魔法は、妖精がパートナーとして居なければ使えない。呼び出した妖精と契約する事により、その妖精が得意とする魔法を契約者も使えるようになる為、その結果がその後の人生を左右してしまう重要な儀式なのだ。
目の前では、この国の王子が『妖精召喚』を行っていた。
「──我の求めに応じ、力をかせ!」
王子が呪文を唱える。足元の魔法陣が輝いたかと思うと、その光の中から小さな美しい女性が現れた。肌は青く、背中からは水のような翼が生えている。
『はじめまして、ご主人様。水の妖精、ウィンディーネと申します』
周りから歓声が上がった。ウィンディーネと言えば強力な力を持つ妖精として有名だからだ。
「さすがは我が国の王子様だ!」
と彼を称える声が聞こえた。
──そんな盛り上がりの中、教師に名前を呼ばれた私は緊張しながら魔法陣の上に立った。
「万物を創る妖精よ──我の求めに応じ、力をかして!」
王子の時と同じように、足元の魔法陣が光る。その光を見つめながら私は願った。
(どうかお願いします。イフリートやシルフを召喚したいなどと贅沢は言いません。でも出来れば⋯⋯イケメンをお願いします!!)
光が集まり形を成す。そして、トリが現れた。
⋯⋯⋯⋯トリ?
トリの降臨。何故か鳥が現れた。イケメンどころかトリだった。
しかも鷹や鷲みたいなかっこいいトリではなく、なんかポッチャリだ。その小さな翼で、ちゃんと飛べます? と聞きたくなるようなメタボ体型だった。
周りも困惑しているのが分かる。先程まで、王子様の召喚でお祝いムードだったのに
「え、トリ? あんな丸いけどトリなの?」
「あのトリ、魔法使えんの? 丸いけど」
と誰かが言ったのが聞こえた。そこでハッとする。
「あんたの、得意な魔法は!?」
契約者は召喚した妖精が得意とする魔法が使えるようになる。このトリの得意魔法は何かしら、トリだから風魔法?
『わたしは──面白い小説を書きます』
──は?
私は思わず、鳥頭を鷲掴みにした。
「面白い小説書く、って何よ? なめてんの?」
『いやいや、小説を書けるって凄いですよ! 完結させるだけでも意外と大変なんだから。それが面白いなんて凄い才能です』
「完結させるのが大変とか、凄い才能だか知らんけど、そんなの魔法じゃないじゃない」
『じゃ、特別にオマケ! わたしのトリ権限でカクヨムサイトの注目作品トップに君の作品を載せてあげます!』
こうして私は、火や水の魔法を使う事は出来ず、アカデミーを退学した。そして、半分ヤケクソにカクヨムサイトに投稿を始めた。
するとトリの魔法のおかげかトリ権限の力なのか、私が書いた小説は大ヒット!
あっさり週間1位をトリ、コンテストでも大賞をトリ、あっという間に書籍化をし、娯楽が少ないこの世界で有名作家となったのであった。
トリの降臨 よつ葉あき @aki-2
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