祓い屋と少女

氷魚

プロローグ

呪い。


人、または霊が誰かを恨み、憎み、悪意を持って対象相手に対し、災厄や不幸をもたらせしめようとする行為を呪いと言った。特に人が人を呪い殺すために行うものは古来日本では、呪詛、あるいは調伏と言われている。


では、呪いはどのようにして生まれたのだろうか。そう、呪いは辛酸、後悔、恥辱・・・などの人間の負の感情から生まれるのである。ソレは自由自在に形を変え、人を襲い、喰らう。人を呑み込み、人間を人間でなくする。ついには・・・死に追い詰める。


世の中は理不尽な現実のみが平等に与えられる。呪いは本来、元々あるもの。言い方を変えれば、自分の中に隠れたもう一人の自分なのかもしれない。それが憎しみや悲しみによって、増殖し、次第に大きくなっていく。呪いは意思を持ち、満足するまで呪い続ける。呪いは自分を貪り、やがては・・・自分が自分でなくなる。そんな恐ろしい感覚に襲われながら、人は願う。



『金さえ払えば、どんな呪いも、霊も祓ってくれる…』



苦しみ、もがき、抗う者は“ソレ”に救いを求める。



『いわゆる、祓い屋がいるらしい』



だが、“ソレ”を呼ぶには、覚悟が必要である。



『でも、誰もが呼べるわけではない』



それは何故か?


『呼ぶにあたって、条件が存在する。それに、本来は呼んではいけないものだから・・・』



“ソレ”は人を救い…堕とすからである。



『それでも、呼びたいのなら・・・呼ぶがいい』



死にたくないなら決して“ソレ”は呼ぶな。


だが…どうしても誰かをなら、“ソレ”を呼べ。


きっとすくってくれるだろう。

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祓い屋と少女 氷魚 @Koorisakana

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