すごい……本当にすごいです。
作者様のストーリー構成の巧みさは他の作品で既に知っていたはずなのですが、今回も舌を巻きました。短いながらも読み応えのあるホラーミステリー(時々コメディチックな)短編です。
登場人物設定における発想も面白いです。
この物語は何故か髪が伸びてしまう雛人形たちの目線で進んでいきます。何故自分たちは髪が伸びるのか? 霊的なものの仕業なのか? であれば、以前の住人の死の謎を解かなければならない――と人形たちはそれぞれ死の真相を推理しますが(この推理もクスッと笑えるものから真面目なものまで、内容がとても面白いです)、部屋の住人に不気味がられ、『呪いの市松人形』として順番に撤去されていきます。
順番に撤去されていく雛人形たちの捨て台詞(?)も面白くてお気に入りです(くちをし!とかにくし!わろし!わりなし!とか……可愛くて好きです笑)。
そして、物語の最後にかけて、どんでん返しが行われます……。
真実を知った時、ゾクッと背筋に寒気が走りました。
お気に入りの一作です。ぜひ読んでください。
ある家で、未解決の殺人事件が起きた。
被害者は一松仁子。市松人形を作って生計を立てている。
そこにとある一家がこしてきて、
三月になると雛人形を飾るのだが……
一体、一体に謎の現象が働き、髪の毛が伸びてしまう。
そして人形は各々、自分達の身に起きていることは、過去にこの家に起きた殺人事件が関係していると判断し、事件の真相を推理して行くのだが、
なかなか真実に辿り着けず一体、また一体と人形供養されてしまう。
果たして、この家で起きたこととは……?
……
……
……
……
……
……
ところで、現在、黒澤カヌレ先生の専属秘書をさせていただいている私から皆様に報告がありまする。
黒澤先生は、現在、『事故物件ミステリー縛り』に挑戦するというプロジェクトを立ち上げており、
次回作の構想も完成している。
それは、今回の物語の舞台となった家の 隣の事故物件の物語で、
そこには韓国人系の人間が半地下の空間で、クリスマスツリーを永遠と作るという内職をしており、
ある日、もみの木が際限なく枝が伸びてしまうという事象が起きる。
半地下の住民はもみの木を処分し、
もみの木が去り際に
「ハレルヤ!!!」
と叫ぶ。
という話でござます。
明日にでも投稿を予定しております! 黒澤先生の活躍にご期待ください!!
まさか「ひなまつり」というお題から、こんなにも見事にミステリーを創り上げるとは……。
「髪が伸びる雛人形」という怪異的でありつつ、妙に人情味を感じる雛人形たちを視点人物とし、時に緊迫感を、時にコミカルに話を進めていく技量、見事という他にありません!
前編で散りばめられた伏線が、後編でスカッと解明されていく流れは、まさにミステリーの肝。ミステリーの勘どころをバチッと抑えた物語づくり、たまりませんでした……。
ミステリーとして推理しつつ読んでも楽しく、ホラー的にドキドキして読んでも面白い。
是非ともラストのオチまで読んで頂きたいっ……オススメです――!
事故物件に住む家族。
その家に飾られている雛人形の髪が伸びる、という出来事が起きる。
その怪現象を見た父親は以下の二点を語った。
かつて市松仁子という人形師がこの部屋で殺されたこと。
彼女が作成した五体の市松人形、部屋に置かれていたそれらの髪が切り落とされていたこと。
その親子は上記二つの点と人形の髪の毛が伸びたことには関連があるのではないかと思い、この怪現象を止めるためには、市松仁子の死の謎を解かねばならないと考え、推理が始まっていく……。
この物語の面白いところは、その推理を人形たちが行っていくところです、
どの人形も個性があって、ある人形の推理が間違っていたことが判明するたびに、撤去されていく様子は、まるでクローズドサークル系のミステリー小説で、日が経つごとに犠牲者が増えていくかのよう。
今回もその謎の真相は驚くようなものなのですが、ここからが黒澤カヌレさんの真骨頂で、さらに衝撃的な事実がその後で判明します。
序盤の方から注意深く読んでください。
ミスリードが仕込まれていたことに、終盤の方で気づくことになると思います。
技巧が凝らされた傑作です。是非、読んでみてください。