ICBMよ、終わりの鐘を鳴らせ

白川津 中々

◾️

核ミサイルが日本に向けて発射されました。


スマートフォンから鳴り響くけたたましいアラート。表示される緊急避難指示。なるほど、核攻撃。国家の終焉。人生の終了。着弾まで残り、一分。そうか、死ぬのか。老後の心配をしなくていいなぁなどと、呑気なことを考える。


「終わりだぁ!」


大袈裟に騒ぐ市民を横目にインスタントコーヒーで一服。ブランデーがあれば最高だったのだが生憎と俺は貧民。安いカフェインでアルコールの代替とする。まったく、戸惑う衆人の愚かさといったらない。これまでの人生で何をしてきたわけでも何を残してきたわけでもないのに何故そんなに生きたいのか。馬鹿馬鹿しい話だ。いや、何者でもないからこそ騒ぐのか。なにせ、何もない者達なのだから。

そう考えると俺こそこうも余裕綽々で滅亡を見守れる立場ではない。独身子なし。社会貢献甚だしくなし。生きている意味を提示できない人間筆頭である。世の終わりに慌てふためき、命に固執すべき存在なのではないだろうかと自問する。


「まぁ、いいか」


結論。

まぁいいか。

これまでなにをやってきたわけでもない。苦しまずに死ねるのであれば結構じゃないかと居直る。残りのコーヒーは残り僅か。せめて、このひとときくらいは落ち着いていよう。


青い空

いよいよ見える

核弾頭

ますます増すは

阿鼻叫喚


コーヒーを飲み干し、駄作を読む。後は終わりを待つだけ。気楽なもんだが、別れの挨拶くらいはしようか。


「さて、それでは皆様、さようなら」

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