学校のてびき

浅野エミイ

ありがとう

(この本の説明)

 この本は「クラスメイトと声に出して読んでみる本」です。

 セリフ(鍵かっこのところ)の左に書いてあるのが、セリフを言う人です。鍵かっこになっていないところは地の文と言います。ぜひ役を決めて学校で声に出して読んでみましょう。少し芝居がかってもいいですよ。自由に音読してみましょう。

 では、お話が始まります!


『ありがとう』


 ある晴れた日。城ヶ崎小学校のあるクラスの休み時間。クラスの子が暖房の前に集まっていました。


〇〇さん「寒いなぁ。やっぱり教室ではここが一番あったかいね!」

✕✕さん「宇宙メダカの世話とか、寒い中やるのは嫌だなぁ……」

△△さん「嫌でも誰かが世話をしないといけないからね! いいじゃん。宇宙から帰ってきたメダカの世話なんて、なかなかできないんだから」


 ◯◯さんと✕✕さんと△△さんは、気温の低い中、メダカの世話をしています。このメダカは、宇宙飛行士だったこの学校の卒業生が宇宙から持ち帰ったものです。

 でも、正直そんなことは三人にとってはどうでもいいことでした。そんなことよりも先生に仕事を押し付けられて、「面倒くさいなぁ」という気持ちでいっぱいだったのです。

 暖房の前でメダカの観察をしていると、〇〇さんが話し始めました。


〇〇さん「ところで知ってる? 『勇者ああああ』って」

✕✕さん「何、それ。『勇者』っていうから、ゲームの話?」

△△さん「ゲームなんてどうでもいいよ。それより今日の給食はなんだっけ?」

〇〇さん「今日の給食は城ヶ崎ライスだって。さつまいもと小豆が入ってるやつ」

△△さん「やった! 好きなんだよね、城ヶ崎ライス!」

✕✕さん「それより『勇者ああああ』って何? 気になっちゃうよ」

〇〇さん「うん、実はこの街に悪者がいたらしくて、それを倒したのが『勇者ああああ』なんだって」

△△さん「なんだそりゃ? 『悪者がいたらしい』って……悪者なんていたの?」

✕✕さん「あそこの大家さん? いつも校庭の声がうるさいっていう……」

〇〇さん「違う違う。あそこの大家さんはよく廃品回収の日にリサイクルを持ってきてくれるいい人だよ。よくわからないけど、『悪者』がこの街にはいたんだって」

✕✕さん「へぇ〜、興味ないや。今が平和ならいいし」

△△さん「いや、ちょっと待ってよ。今度はこっちが気になっちゃったよ」


 △△さんが〇〇さんを見ている中、✕✕さんはメダカを網ですくって小さいバケツに移します。水槽の水を変えるには、まずはメダカの避難が必要です。


✕✕さん「悪者より、『勇者ああああ』の話でしょ?」

△△さん「それよりも自分の住んでいる街に悪者がいたってことのほうが気になるよ」

〇〇さん「……正直どちらの話も大したことじゃないんだけどね」

✕✕さん・△△さん「こっちは気になるよ!」

〇〇さん「じゃあ、順を追って話すよ。ともかく、この街には『よくわからないけどもすごく悪いやつ』がいて、それを倒したのが『勇者ああああ』なんだって」


 〇〇さんの言葉に、✕✕さんは△△さんに向かって首をかしげました。


✕✕さん「なんだかすごくふわっとした話だね」

△△さん「全然内容がない話なんだけど……?」

◯◯さん「ごめん、ごめん。実はあまり考えないで適当なことを話しちゃった」

✕✕さん「適当な話〜? ……まぁ、そういう他愛もない話も悪くはないけどもね」

△△さん「いつも『身になる話』ばっかりだとこっちの身が持たないもんね」

〇〇さん「ねぇ、君だったらこの話、どんな話にする?」


 え? 『君だったら?』 ……どういうことだろう?

 もしかして、自分もこの会話に混ざっているの?


✕✕さん「そうだよ。何を今更言ってるの?」

△△さん「クラスメイトだし、同じ班じゃん」

◯◯さん「君は想像力が豊かだし、何か面白い話を考え出してくれるんじゃないかなって」

✕✕さん「何か面白い話、思いついたら聞かせてよ」

△△さん「確かに、ひとりで想像するよりもみんなで考えたほうが楽しいかもね」


 何か思いつくかなぁ……? 思いついたらいいんだけど。

 こうやって、みんなが期待してくれている。そう思うとなぜだか、今までひとりきりだったという気持ちが少しだけ温かくなっていく。

 ひとりじゃないんだ。


「声をかけてくれて、ありがとう」

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学校のてびき 浅野エミイ @e31_asano

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