赤いレンガ館の恐怖
つむぎとおじさん
全1話
いつも通る道沿いに、見慣れないレンガ造りの赤い洋館が建っていた。
いつの間にできたんだろう。
ボクたちは好奇心に駆られて近づいてみた。
「別荘かな」彼女が言った。
「レストランかもしれない」ボクがそう言ったのは、中から甘い香りが漂ってくるからだ。
ドアはあけっぱなしだった。
「誰もいないのかな」ボクはつぶやいた。
「覗いてみる?」彼女がいたずらっぽく笑う。
ボクは彼女の手を引いて中へ入っていった。
甘い香りが食欲をそそる。
レストランなら、シェフはかなりの腕前にちがいない。
奥へ進むにつれて、体がみょうに重く感じる。
粘っこい感覚が足元にまとわりついている。
床になにかぶちまけたのだろうか。
「あれ? おかしいな……」
振り返ろうとした瞬間、視界がぐにゃりと歪んだ。
「コッキー、なんかヘン。からだが動かないよ」彼女が不安そうにつぶやく。
「ボクもだ、ローチェ……これはワナだ」
香りが脳をしびれさす。思考がゆっくりととまっていく。
僕は陶然となりながらも必死に羽根を動かそうとした。
しかし粘着質の床がそれを許さなかった。
「ローチェ、どうやらボクたち、ここで終わりみたいだ」
「やだよ、コッキー。もっとあなたと飛び回っていたかったのに」
「ボクもだよ。君は最高の友だちだったけど、本当は、君のことがずっと前から好きだった」
「あたしも。あなたの卵をいっぱい産みたかった。そして人間たちを困らせたか……」
彼女はそれきり何も発しなくなった。
視界が涙でにじんだ。
その時、反対側の入り口の向こうに仲間の影が見えた。
「おい、そこの君!」
ボクはさいごの力を振り絞って叫んだ。
「入るな! 足ふきマットに足をのせたら……終わりだ……ぞ……」
視界が暗転した。
最後に聞こえたのは、仲間が粘着シートに貼り付くかすかな音だった。
(完)
赤いレンガ館の恐怖 つむぎとおじさん @totonon
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
カクヨムを、もっと楽しもう
カクヨムにユーザー登録すると、この小説を他の読者へ★やレビューでおすすめできます。気になる小説や作者の更新チェックに便利なフォロー機能もお試しください。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます