概要
「先生、いくら丼は至高の食べ物だって本当ですか?(第4話より)」
その一言は、世界を揺るがし、24時間で圧巻の殺戮と破局をもたらす!
政府による厳しい食料統制下で暮らす14歳の少女ユーリ。
彼女が食べられるのは「ソイレントグミ(すごいまずい)」だけ。
少女は、甘いも苦いも、しょっぱいも、美味しいも知らない。それでも──美味しいものへの憧れは止められない!
その憧れは、事態をごろんごろんと転がし、世界をとんでもない大混乱に導いていく。恐ろしい秘密警察、暗躍する少年兵と新興宗教、危険な犯罪に手を染める親友──すべては絡み合い、運命がすべてを導く。
ちょっと笑えて、ちょっと切ない、ダークでライトな読み心地の不思議世界へようこそ。
おすすめレビュー
新着おすすめレビュー
- ★★★ Excellent!!!多分、想像を超えています。
まずはじめに。
この作品はライトノベルだと思って飲んではいけません。
流麗な修辞法と高度な科学知識、そして致死量の伏線が入っています。
服用する際は、医師の詳しい説明を受けて下さい。
そう言いたくなる程の超高濃度な作品だという事です。
一言で言い表すなら
「ヘビーサイバーパンクいくら丼ノベル~デスソースを添えて~」
とでも言いましょうか。
もはや薬なのか食べ物なのか分かりませんが、確実に毒か薬であろう衝撃作です。
とにかく飛んでもない伏線の量と質。
これは恐らく、今から読む貴方の想像を超えています。
高濃度過ぎてちょっと飲み込むのが大変なくらいですが。
読了後、必ず最高の作品だと思える名…続きを読む - ★★★ Excellent!!!いくら丼。それは人類最後のユートピア
いくらとは鮭やマスといった魚の魚卵を醤油漬けにした食品。いくら丼は文字通り丼に入れたご飯の上にいくらを盛り付けた至高の逸品。
プチプチとした弾ける食感と甘しょっぱい味わいが織りなす美味しさは格別。
我々庶民ではなかなか手が届かない高級品ですが、この世界ではさらに手が届かない。
政府による食料の統制で食べられるのはサイレントグミという、不味い代替食品のみ。
そんなディストピアな世界で主人公の少女はいくら丼の存在を知ります。
憧れは物語を二転三転させ、重厚でダークな世界の真実を浮かび上がらせていきます。
食べることは生きること。
人間の三代欲求の一つである食欲が、時にどれほどの力を持つのかを…続きを読む - ★★★ Excellent!!!こちらの作者の方、天才だと思います。カクヨムSF界、至宝の紅玉
公開分読了記念に、心からの賛辞を込めてレビューを書かせていただきます。
まず何より、主人公ユーリの一人称に完全に惚れました。毒舌でユーモラス、なのにどこか切なくて、頭の中の幻聴AIとの掛け合いが、まるで翻訳文学のような独特のノスタルジーを醸し出しています。『異国の子どもが語る未来の記憶』とでも言いたくなるような、懐かしさと異質さの絶妙なバランス。
それでいて、SFとしての完成度が驚異的。精巧かつダイナミックな設定、魅力的なガジェットの数々、緻密に構築された舞台背景、そして宇宙開拓への憧憬が、物語の根底にしっかりと息づいています。月面開拓船の打ち上げシーンなど、映像化されていないのが信じら…続きを読む - ★★★ Excellent!!!心が死ぬからディストピア、無機質ゆえのディストピア
1章を読んだうえだ上のレビューです。
世界観や勢力の設定の作り込みの細やかさに圧倒されました。
なんといっても、ディストピアという世界の空気を出す事に優れている作品だと思います。
この作品はAIが登場するのですが、彼らの存在がこの作品の良さを際立たせているなと。彼らの、機会ゆえの無機質さが段々と「あぁ、これは生きている人も絶望するわ」と納得させるほどの説得力を持たせているなと思います。
世界が滅びているとかではなく、人が絶滅しているわけではないけれど、その世界に希望はない。
そういったディストピアを味わいたい人に是非。
自分もまだ一章しか読んでいないので、タイトルにもある「いくら丼」か…続きを読む - ★★★ Excellent!!!残酷にして壮麗、極上のディストピア革命譚
第2章まで読了。
「いくら丼?」という軽やかな題に「はらぺこ少女と美人教師」で始まる気の抜けたキャッチ。
ほのぼのお料理教室と油断して手に取ったが運の尽き。
誰がこのハード展開を予想できるでしょう?
1話目を読み終えた時点で、完全に放心させられました。
まず「フードプリンタ」を始めとするテクノロジー描写が、自然かつ鮮やかに作品テーマを浮かび上がらせる。
そして「食べる」が「生きる」「選ぶ」へと接続し、個の小さな行為が社会の根幹を揺るがす物語へスケールする。
それがテンポとメリハリのある文体で描かれて、緻密にエスカレートしていきます。
その構造が見事過ぎて、筆者の深い洞察と筆力に唸りと…続きを読む