こちらの作者の方、天才だと思います。カクヨムSF界、至宝の紅玉
- ★★★ Excellent!!!
公開分読了記念に、心からの賛辞を込めてレビューを書かせていただきます。
まず何より、主人公ユーリの一人称に完全に惚れました。毒舌でユーモラス、なのにどこか切なくて、頭の中の幻聴AIとの掛け合いが、まるで翻訳文学のような独特のノスタルジーを醸し出しています。『異国の子どもが語る未来の記憶』とでも言いたくなるような、懐かしさと異質さの絶妙なバランス。
それでいて、SFとしての完成度が驚異的。精巧かつダイナミックな設定、魅力的なガジェットの数々、緻密に構築された舞台背景、そして宇宙開拓への憧憬が、物語の根底にしっかりと息づいています。月面開拓船の打ち上げシーンなど、映像化されていないのが信じられないほどの迫力と美しさ。
正直、弱点もあります。仕事帰りや休憩時間に6800文字のオープニングはなかなかこたえますし、脇役に尺を振りすぎて焦点がぼやける場面も散見されます。しかし、それすらもこの作品の魅力の一部。好きなキャラクターを見つけて、その人物を中心に追っていくと、物語の奥行きと設定の深さにどんどん引き込まれていく仕様になっているのです。
ぜひ、時間のあるときに一気に読み進めてください。SFが好きな人も、これから好きになる人も、どちらにも深い余韻と本当のカタルシスが体験できることを、私は心から約束します。