新説・牡丹灯籠
おじさんさん
宝暦11年・8月
「困ったわ〜」
私は手を見る。痩せて骨と皮だけになったと言う比喩はあるけれど私は骨だけ。
「お
私の事をお露と呼ぶ、この子は侍女のお
飯島家の一人娘である私のお世話をしていた子。
していたと過去形になっているのは、私がもう…
「お露さま、今夜も行くのですか」
「新三郎さまには会いたいけど、こんな私が行っても新三郎さまの迷惑にならないかしら」
荻原新三郎さま。根津の清水谷の貸長屋に住んでいる浪人。その知り合いでお医者さまの山本
「新三郎さまもお露さまもひと目惚れだったのでしょう」
新三郎さまはわからないけど、私はひと目で好きになったわ。
「それなのに数ヶ月も会いに来なくて、お露さまをこんな姿に酷い人です」
私の代わりに怒っているのね。確かに別れ際にこう言ったわ。
「新三郎さま。また来てくださらないと私、死んでしまいます」
そ れ が !
本当に死んでしまうなんて思わないじゃあなくて。
「お露さま興奮しますと、骨がハズれてしまいます」
おっといけない。
「この前もハズれた時、野良犬が骨を持っていこうとして取り戻すのに大変だったんですからね」
「ホネを折らせたわね」
くす。
そうね、確かに驚いたわ。
死んだと思って目を覚したら骸骨になっているのですからね。
「新三郎さまに会いたい気持ちがあり過ぎてまだあの世にはいけないのでしょう」
私の為にごめんなさいね。
「お米、お前は私の看病疲れで倒れたと聞きましたが、それでよかったの」
「もちろんでございます! 私がいないとお露さまが迷ってあの世に行けないと困りますからね」
もう迷っているけど。
「ありがとう」
「新三郎さまには生前のお露さまの姿で見えているようですが、他の人からは骸骨に見えているようですので何か対策を考えないと」
自分も骨なのに私が骸骨とか、はっきりと言う侍女ね。
「白い布を被っていってはどうでしょうか」
それは前に試したとき新三郎さまに幽鬼と間違えられて大変だったわ。
「人形細工の得意な人に
江戸の夏を舐めたらダメよ。暑さで溶けて夏の夜の怪談みたくなって大騒ぎになったわね。
「新三郎さまの方から来て貰えばいいのでは」
飯島家の別荘は私が死んでから誰も来ず、手入れも行き届かずに荒れ放題。
近所では幽霊屋敷と呼ばれている。
「私、本物(幽霊)なんですが」
きっと成仏した方がいいのでしょうね。
「でもひどくない」
新三郎さまの下男、伴蔵って人。私と新三郎さまの逢瀬をのぞき見して(新三郎さまは骸骨にとり憑かれている)なんて言って陰陽師やらお坊さんとか告げ口した結果。
「いつのまにかお札とか観音様とか悪霊退散フルコースでしたからね」
「新三郎さまが日に日にやつれていくなんて私のせいだけじゃなくてよ」
「新三郎さまも意外と、朝までね‥」
お米、ゴニョゴニョと何を言っているのかしら。
「でもね」
生きている新三郎さまの人生。未練だけど死んでしまった私の一生。
「今生では添い遂げれなかったけど、来世はきっと添い遂げてみせましょう」
宿願成就。きっとね。
「お露さま」
一番鶏が鳴いている。
「あら、もうこんな時間。お米、行きましょう」
「お露さま、どちらに向かわれますか」
「黄泉の旅路とやらへ」
朝まだき、薄暗い道をお米が牡丹柄の
灯籠の
新説・牡丹灯籠 おじさんさん @femc56
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
カクヨムを、もっと楽しもう
カクヨムにユーザー登録すると、この小説を他の読者へ★やレビューでおすすめできます。気になる小説や作者の更新チェックに便利なフォロー機能もお試しください。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます