骨ばる手
雨蕗空何(あまぶき・くうか)
骨ばる手
ごつごつとした手だった。
大きな手。骨ばった手。
父の手だった。
遠出をして、つないだ手を引かれるとき。
やんちゃをして、父がしゃがんで目の高さを合わせて、それで両手を両手でにぎられて、たしなめられるとき。
そんなときどきの、父の手の大きさと無骨さが、なぜだか記憶に残っている。
私とは違う、違うと思っていた、大きな手。
この手で息子を抱いた。生まれたての、ふわふわの子。
写真に写る私の手は、この息子と比べてなんと大きくて、ごつごつとしていることだろうか。
あのときの父の手と、同じ手をしていた。
同じ手になるほどの、歳を重ねた。
そして同じ手を持つほどの人間に、なれたのだろうか。
そしてまた、ふわふわのみずみずしい、生まれたての手に、この手を重ねた。
その手と比べて、私の手はなんと骨ばって、しわが浮いて、ごつごつとしていることか。
あのときの父を通り過ぎて、決して見ることの叶わなかった、祖父となった男の手だった。
今、息子は私よりも大きくなった手で、眠ってしまった孫を抱いている。
私はその横で、父の墓前で、手を合わせる。
骨ばる手 雨蕗空何(あまぶき・くうか) @k_icker
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