【掌編小説】枯れ葉 オータム

こふい

第1話

 枯れ葉が舞っている。

 池の周りを車で走っていると、赤く染まりきったもしくは茶色くかさかさになった広葉樹の葉が、風に吹かれて悶えるようにあるいはもがくようにフロントガラスに向かって打ち付け、あるいは直接に黒いアスファルトの上に流されるように落ちていく。

 後ろからは煽るように白い車高の高いベンツが私の小さな車に執拗に距離を詰めてひっついてくる。どんなやつが運転しているのかとミラーを見るが、光の反射でよく見えなかった。

 太陽の軌跡が低くなり、この時間に車に乗るときはいつも日の光がまぶしく、手探りでサングラスをとり、かけた。カーラジオのスイッチを入れ、いつも聞いているFM局に合わせた。ラジオからは聞いたこともない音楽が流れていた。男性が裏声を使いながら若々しく切ないラブソングを歌っているのを聞きながら車をわずかに加速させた。

 空は水色で刷毛ではいたような白い雲が漂っている。

 いったい何のために生きているのだろう、と思う。青臭い疑問だ。しかしそのような思いにさいなまれることが、この年になっても少なからずあるのだ。むしろ若い頃よりも多いくらいで、若い頃よりもより切実にである。あるいはそれはただの思い過ごしに過ぎないのかもしれないが。

 そんなときにはよく、学生だった頃の自分を思い浮かべた。空は無限のように高く、強く当たる風もものともせずに歩いていた。コーヒーを飲み、たばこを吸い、ビールを飲み、夜更けの道はどこまでも真っ直ぐだった。帰りが遅くなれば夜通し映画を見たり、友人の下宿に転がり込んだりした。

 あの頃のあいつが今の自分を見ればどう思うだろう。無駄に贅肉だけがついた偽物の世界に住んでいる自分を。ともに語り合う相手もない、そんな自分を。

 信号待ちで車を止める。後ろのベンツはもう姿を消していた。

 あの頃、とても大きく見えた先輩たちはどうしているのだろう。文学を語ってやまなかった彼らは元気にしているのだろうか。あるいは友人や後輩たちは。

 公園の駐車場で何とはなしに車を止め、自動販売機でブラックコーヒーを買った。

 間欠泉のように噴水から勢いよく水が吹き上がり、子どもたちの歓声がここまで響いてきた。

 座席に深く腰掛けながらゆっくりと黒く苦い液体を唇の隙間から流し込み、空を眺めやった。かすれた雲が見えないほどの速度でゆっくりと形を変えながら動いていた。そして、風に吹かれた落ち葉がまるで小鳥のように揺れながら舞っていた。



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