【短編】尾骨

オオオカ エピ

第1話尾骨

「一度国内では絶滅して、大陸の個体を借りて復活させた鳥がいるじゃん?」


「日本の名を冠した鳥のことね」


「そうそう。伊勢神宮に奉納する剣の柄に羽が昔から使われていた、あの鳥」


「大陸の方でも数羽しか残ってなかったの、数百迄に増やしたんでしょ。凄いよね。でも、アレってホントに同一種なの?」


「一応分類?「◯◯目」「◯◯科」「◯◯属」ってやつね。一種で完結。遺伝子には0.1%未満の差異で、例えるなら個人差レベルらしいよ」


「なら、良かったよね。大陸の方のも絶滅しかけてたっていうし」


「まあ、元々人間が乱獲したり、農薬撒いたりしたせいで絶滅させたんだけど。復活に携わった人たちの努力は素晴らしいと思うよ。近辺の農家さん達だって、無農薬米にしたりと色々気を遣って協力して。わたしも実際に離島の保護センターで実物見て、おお!これがかって、感動したもんだ」


「なら、いいじゃん。なにか問題あるの?」


「かつて日本に居たその鳥と、大陸の鳥の尾骨の数が違うって話が、ニュースになったことがあったんだよ」


「どう違うの?」


「大陸の個体の方が一個少なかったんだって。そっちの方が長距離を飛ぶから軽量化の為に進化したんだろう、みたいな話だった」


「でも同じ種、でいいんでしょ?」


「その程度は、進化の過程でよくある話だろうね」


「そうなんだ?」


「ただね、そのニュース検索してもでてこないんだよ」


「はい?」


「わたしもうろ覚えだったからさ、尾骨だったか脚だったか確認しようと思って探したけど、ヒットしないんだよ」


「あなたの勘違いだったんじゃないの?」


「わたしは映像記憶には自信があるんだ!自分がどういうシチュエーションでそのニュース画面を見てたかまで思い出せる。あの時は夕食の配膳中で、椅子の斜め後ろから手を伸ばして皿を置いた時だった」


「でもうろ覚え」


「細かい内容は廃れるんだよ」


「わかった。わかった。ごめんて。で?」


「気持ち悪いからさ、探したんだ。ワードを工夫して探しまくった」


「で、見つけたんだ。尾骨って断定してたものね」


「そう。ニュースのスクショをリプしてコメントを残してる人がいたんだ」


「つまり、画像だから残ってたと。文字は削除されてたんだ?」


「そういうこと。きっと、違うものを増やしてきたんじゃないのかって、ケチつける人が居るんだろうね。今までの努力は正しいのだから、小さな差異も許さない。追求の綻びになりそうなものは隠蔽しろと、どっかから圧力があったんじゃないかな」


「こっわ!」


「あのニュースだって、一生懸命研究した人の、ひとつの成果だったんだろうにね」


「ベタ・ハーフムーンとベタ・オーバーハーフムーンの差くらい微妙。見た目分かんないし、遺伝情報的にほぼ一緒なのに」


「正直、専門家じゃないわたしらには区別はつかんわ」



「ねえ。もしさ、宇宙人がいたとしてだよ?」


「急にどうした?唐突だな!」


「その宇宙人が、地球人うっかり滅ぼして、ヤバい!貴重な原住民を復活させなきゃってなったら、全部ひとまとめに地球人だよね」


「そりゃそうだろうね。連中に欧米人もアジア人もわかりゃしないよ」


「ホントの人種差別のない世の中の始まりだね」




「……恐いわ!」

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