軽妙な語り口で性自認という極めて切実な問題に真正面から踏み込む短編。抱き心地の描写は笑える一方、その奥にある骨に気づく瞬間で物語は静かに反転し、主人公の行き場のない恋心を際立たせているように感じました。選択肢が広がる幻想と、それが潰える痛み。その両方を受け止めた主人公の覚悟を感じました。
短いのに読後の余韻が強く、語り手の揺れる自己認識が鮮やかに浮かびあがる一篇でした。軽妙な語り口の裏に、切実さとユーモアが同居していて、その構成力に惹かれます。小早川くんとのやり取りが象徴へと転じていく展開が見事で、作品の芯が一気に立ち上がる。思わず憧れのまなざしで読み終える、鮮烈な短編でした。
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