家庭不和のせいで息苦しい、学校でもそれほど大きく伸びが出来るわけでもない、
自分に許されている狭い範囲を溺れないよう必死に泳いでいこうとする主人公。
そんな主人公に「1発3000円」で買われる佐伯。
二人の気持ちのズレもあって、深く交わりそうに見えて浅くしか交わらない関係。
「買っている」、そして「買われている」間が、二人とも一番素直になれている気がします。
私の目には、流されることで少しでも生きやすくしようとしている主人公と、流されないように生きるために自分を売る佐伯の対比がとても見事に映りました。
ただ、もしかしたら読み手によって様々な解釈が生まれるお話かもしれません。
ストーリーはしっかり進む、心理描写も状況描写も過不足なく書かれている、それでも読み手に考える余地を与える。
1万文字弱で、ここまで書ける作者さんはどれだけいるでしょう。
本当に素晴らしい作品です。