スケルトンを退治しに行こう!
敷知遠江守
駆け出し(ポンコツ)四人組
「スケルトン討伐って何すれば良いんだろうな。ゴブリンとかならさ、剣でばっさり行けば良いってわかるけど」
パーティの前衛である剣士が剣の柄をさすりながら他の三人に顔を向けた。
私たち四人は冒険者としてはまだ駆け出しで、ギルドから依頼を受ける際も、「元気で帰って来る事を最優先に」と受付嬢が初心者にかける言葉を未だに言われている。
今回の依頼は何年か前に魔物の襲撃で滅んでしまったとある村に行って、そこに出現するスケルトンを討伐する事。
「スケルトンって骨のモンスターなんだよね? どうやって骨だけで動けるんだろう。普通どんなモンスターも、動く時って筋肉を動かすんだと思うんだけど、それが無いんだよね?」
スケルトンの動く仕組みに興味を持つとか、魔術なんて学ぶ女の子はどこか思考がぶっとんでいる。そもそもアンデッドなんだから、悪霊が骨を動かしてるんだと思うんだけど。
「あはは、スケルトンにお肉が付いてたらゾンビになっちゃうじゃないですかぁ。アンデッドの倒し方なんて、きっとどれも一緒でしょ。さっとウェルダンに焼き上げちゃえば良いんだと思うなぁ」
なんでうちの
「じゃあ、今日の主役はあたしだね、火炎魔法でこんがり行くか、衝撃魔法で粉々に砕くか。ねえ、あなたはどっちが良いと思う?」
魔術師の娘は頭の後ろで手を組んだ姿勢で、雑に私に話を振って来た。
そもそもお金を貰う仕事だというに、なんでこの人たちは事前に情報収取というものをしないかなあ。
「先輩冒険者の話だと、スケルトンは、私の神聖魔法で武器に加護を与えて攻撃するか、光魔法で浄化するかでしか倒せないそうですよ。光魔法って使えたりします?」
『光魔法』という単語が出ただけで、
……いや、わかるよ。私だって苦手な分野はあるし。だけどさ、この仕事を紹介された時に二つ返事で受けるって言ったのあなただよね?
「……いけず」
魔術師の娘の呟きが聞こえてきた。
なんだろう、今回も上手くいかない予感がぷんぷんする。
スケルトン討伐だって言ってるのに、なぜか現地に到着したのは午前中。
こういう計画性の無さ、毎回の事ながら本当に呆れる。
周囲はボロボロに朽ち果てた家屋がぽつぽつと残っており、簡素な石畳が各家々を繋いでる。どの家にも柵で簡易的な檻が作られていて、恐らくかつてはそこに家畜が飼われていただろう事を想像させる。
大きな石を並べてそこに土を盛った土塁が村を囲っていて、村の中央に崩れた石塔がある。
印象としては、まるでちょっとした砦のよう。
村を散策して気付いた事が二点。
一点目は村の一角に墓地があり、その周囲だけ全く雑草が生えていない事。
そしてもう一点は、村のいたるところに同じように丸く雑草の生えていない場所があるという事。
もし仮にこの雑草の生えていないところから一斉にスケルトンが現れたとしたら、私たち四人ではひとたまりもないかもしれない。
「あれじゃないの? この村って魔物に襲われたんでしょ? 怪我した魔物が血を流しながら走り回ったんじゃない? 魔物の血が零れた場所って雑草生えないって聞くよ?」
私の懸念を魔術師がたった一言で打ち消した。それに賛同する剣士。
……あんたはどうせその娘のいう事ならどんな事でも賛同なんでしょ。何でこう男の子ってのは、大きいおっぱいに惹かれるんだろう。
「それよりさ、さっき言ってた武器に加護を付けるって何? 今までそんな魔法見せてもらった事ないんだけど」
斥候に言われて、そう言えばこれまでアンデッドと戦闘をした事が無い事を思い出した。
斥候に短い
「へぇ! かっこいいじゃん! 毎回これやってよ! なんか凄い切れ味良くなる気がするもん」
剣士も小剣を見てかっこいいと子供のように目を輝かせている。俺の剣もこんな風になるのかと、自分の剣の柄を上下に擦っている。……女の子たちの前でその仕草はちょっといかがなものかと。ほらあ、魔術師が変な事を想像して顔を赤くしちゃってるじゃない。
だいたい、毎回あんたたちの傷を魔法で治すので私の体力は限界なの。そんな無意味な事に体力が使えますかっての。
それから比較的原型を留めている家に荷物を置き、魔術師が外に魔物避けの結界を張った。今回はアンデッドが相手という事で、私もそこに結界を施す。
これであとは陽が暮れるのを待つのみ。
少し早い夕飯を取り、ちゃんとトイレも済ませ(これ大事!)、いよいよ夜を迎える事になった。
少し期待外れだったのは、陽が暮れたらすぐにスケルトンだらけになるんだと思っていた。ところが、周囲が真っ暗になり、外の松明がパチパチと弾けても、ちっともスケルトンは姿を現さない。
……次第にみんな眠くなってきてしまった。まあ、いつもならみんな寝る時間だもんね。
剣士が剣を抱いたまま、首をこくこくとリズム良く縦に動かしている。その隣でつば広帽を脱いで栗色の長い髪を大きな胸の前に垂らして魔術師が寝ている。剣士の前には斥候が壁にもたれかけて寝ている。よく見ると涎が垂れている。
……あの、
カチャ、カチャ、カチャ
突然の事だった。
何か金属が擦れるような音が外から聞こえて来た。慌てて全員の体を揺すって叩き起こす。
カチャ、カチャ、カチャ
明らかにその音が近づいて来る。
剣士と斥候に剣を抜いてもらい、神の加護を唱えながら指で刀身をなぞり、剣に加護を付与する。剣がぼうっと青白く光る。
「いた! スケルトンだ! どうやら一体だけらしいな。武器は
剣士が窓の外を注意深く観察しながら三人に報告した。
その報告に斥候が何か引っかかるものを感じたらしい。何で鎧が女物だとわかるのかとたずねた。
「だってあれ、ビキニアーマーってやつだぞ? スケルトンが着てるってだけでビキニアーマーってあんなに魅力が減るもんなんだな」
なるほどねえと、斥候と魔術師が言い合っている。生前にお目にかかりたかったという剣士に、魔術師が冷たい視線を送る。よく見ると剣士の視線はスケルトンの腰の直垂に注がれている。
ええ? 剣士って骨で欲情できるの? ちょっとレベル高すぎない?
「よし、いくぞ。俺が正面からやる。援護とか支援とか頼む!」
剣士はそう言い残し、勢いよく飛び出して行った。
振り下ろした剣がスケルトンの左腕を砕く。砕かれた骨は一旦地面に散らばり、また元の骨に破片が吸い寄せられてくる。
武器に施された加護のおかげで、スケルトンの左腕が青白い炎を上げて燃える。ギャァと叫びにも似た雄叫びをあげるスケルトン。
さらにもう一撃と、スケルトンの右手目がけて剣を横に薙ぎ払う。だが、スケルトンは右手の腕に装着した
剣士の一撃で弾き上げられた剣は、その反動を得て剣士に振り下ろされた。
剣士も察知して避けたのだが、左肩を剣先が切り裂いた。
剣士の左肩から鮮血が飛び散る。うずくまる剣士。
スケルトンが止めを刺そうと剣を振り上げる。
その横から斥候が小剣をスケルトンの肋骨目がけて突き刺す。肋骨数本がはじけ飛ぶ。だがスケルトンは忌々しいという態度で小盾を斥候の顔面に叩きつけた。
斥候の鼻から勢いよく鮮血が噴き出す。どうやらその一撃で斥候は気を失ったらしく、吹き飛んで倒れたままになってしまった。
剣士が立ち上がり剣をスケルトンに向ける。
すると、そのスケルトンの後背の空間に大きな空気の球が発生した。空気の球は周囲の景色を歪めていく。
パンッ!
空気が弾け、スケルトンの胸骨、背骨、肋骨を一瞬で吹き飛ばした。
頭骨と鎖骨が剣士の前にごろりと落ちる。
剣士が青白く光る剣を兜に覆われた頭骨に突き立てる。
だがスケルトンの下半身は健在で鎖骨を魔術師に向かって蹴り飛ばした。折れた鎖骨が綺麗に魔術師の腹部に突き刺さり、魔術師は膝立ちになり自分の血溜まりの中に倒れ込んだ。
そこでやっと私の詠唱が終わった。
「主よ! 聖なる加護を! 我が祈りに応じ、彷徨える魂を導き給う!」
私の手に握られた杖の先から光が天に上り、シャワーのようにスケルトンに注がれた。スケルトンはまるで砂の山が波にさらわれるように光のシャワーによって、ボロボロと崩れて、さらさらと砂粒のように細かくなっていった。
その後、気を失った斥候と、死ぬ寸前の魔術師、肩の肉がぱっかり開いた剣士を回復魔法で回復させていき、やっと三人の傷が塞がったところで、気を失うように眠りについた。他の三人も同様であった。
朝ちゅんちゅんという小鳥のさえずりで目が覚めた。
なんとか傷が癒え、動けるようになった剣士、斥候、魔術師の三人は外で何やら言い合いをしていた。
欠伸をしながら三人の元へとむかう。
「みんなどうしたの? 朝早くから。何かあったの?」
三人は一斉に私の顔を見た。その視線はどう見ても私を責める視線。もしかして、私何かしちゃった?
「ねえ。今三人で言い合ってたんだけどさ、この依頼って、討伐の証拠ってのを持ち帰るんだよね? 今剣士から聞いたんだけど、スケルトンってあなたの魔法で鎧もろとも溶けちゃったんだってね」
その斥候の一言で私は全てを察した。また今回も依頼は失敗しちゃったって事を。
……いや、でも、それ私のせいじゃ無くない?
スケルトンを退治しに行こう! 敷知遠江守 @Fuchi_Ensyu
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