モノクロームの支配に抗う、色彩の革命

 未来社会では、戦争の原因とされた感情が抑制され、人々は心の動きを失っていました。主人公のCOLORは、感情を色として視る「絶対共感覚」を持つ青年です。かつては絵を描くことで世界とつながっていましたが、感情抑制装置「キンコージ」の普及により、その色彩を奪われてしまいます。そんな中、「感情の雫」という不思議な液体と、反抗組織「エモレジ」のリーダーフードの女と出会い、抑圧された感情を取り戻すための戦いに巻き込まれていきます。

 本作は、感情を抑制することで平和を維持する社会というディストピア作品です。「キンコージ」の普及が徐々に個人の自由を奪っていきます。フードの女や博士などのキャラクターが、それぞれの信念を持ちながら、支配された社会に抗おうとする姿が印象的です。

 感情を色で表現する独自の描写は本作の大きな特徴です。「青き憂鬱」「黄金の歓喜」といった表現が、世界の抑圧と解放を視覚的に伝えます。そしてディストピアの恐怖を「色彩の喪失」という形で表現している点に「感情とは何か?」を考えさせられます。

 哲学的なテーマを持ちつつ、色彩豊かな描写で魅せる本作。読後には、抑圧と自由の意味を改めて考えさせられる作品です。

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