帰省したら自室のエアコンが壊れていた件

大田康湖

帰省したら自室のエアコンが壊れていた件

 私の年始は基本的に1月1日昼、茨城県の実家へ帰省し、1月2日に家族で初詣に行き、夜に自宅に戻るというスケジュールである。帰省するとかつての自室で読書やゲームをしながら過ごすのが習わしだ。

 今年もいつも通り実家に帰省すると、出迎えた母にこう言われた。

「お帰り。あ、部屋のエアコン壊れてるからね」

「は?」

 私はひとまず二階へ上がり、自室に入った。部屋に備え付けたテレビとエアコンは、東日本大震災の際、親戚が一時避難した時に整えたと記憶している。子ども時代は父親が独身時代に使っていたという小さなこたつを使っていたが、コードも古くなって危険なので、現在ではただの机として使われている。

 結局私はベランダに干してある布団を取り込み、こたつ代わりに潜って過ごした。

 夕食時、一階に降りてきた来た私は、温度差に愕然とした。大きなこたつと石油ストーブがある居間は、二階とは別世界の暖かさだ。ちなみに居間にもエアコンがあるが、昭和50年代からそのままの骨董品である。

「どうして帰省する前に言ってくれなかったの? そしたら羽織る物持ってきたのに」

「ここのエアコンも今まで入れてなかったのよ」

 私の抗議に母はけろっとしている。父が言った。

「やっぱり買い換えなきゃ駄目か。寒いならとりあえず湯たんぽ持って行くか」

 結局、私は風呂の残り湯を入れた湯たんぽを父から受け取り、布団に入れた。湯たんぽを使うのも子どもの時以来である。当時はアルミ製だったが今はプラスチック製だ。

 寒いので夜更かしする気にもなれず、私は早々に寝ることにした。


 翌朝、目を覚ますと室内は凍り付いたように冷え切っていた。息を吐くと、室内なのに白くなる。私は思わず、自作『一蓮托生』の横澤家のバラックに思いをはせた。

(この令和に、終戦直後の日本の気分を味わえるなんて)

 あり合わせの廃材で建て、暖房は火鉢しかない真冬のバラックの室内は、きっと隙間風で冷え切っていただろう。しかし、リアルで当時の気分を味わうのは勘弁である。私は一刻も早くエアコンのある自宅へ帰りたかった。

 結局、私は風邪をひかずになんとか自宅へ帰ることができた。夏までにエアコンが直っていることを祈るばかりである。

 ちなみに、初詣で引いたおみくじは「中吉」だった。


終わり

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