味付けはイチョウを揚げた天ぷらよりも

釣ール

さっぱりとした人生なんてない

 天ぷらはエビだから美味うまいのか?


 料理人がちゃんと考えてお客に売っているから美味おいしいのかもしれない。


 自分で作る時は少しだけざつになってしまうけど。


 熱すぎる油に身をげてころもでまとった幸せは強いだれかにあっという間にかまれて食われてしまう。


 銀杏ぎんなんならよかったのかもしれない。


 ふまれてはにおいで相手をいやがらせる。


 いや、撤回てっかいしよう。

 茶碗蒸ちゃわんむしに入れられたらまた強いだれかに食われるかもしれない。


 イチョウは願う。

 致死量ちしりょう100%の毒キノコに集まっている胞子ほうしに今すぐ変わってイチョウ達を口に入れようとする生物に思い知らせるために。


 思想しそうねがいも欲望よくぼうも。

 細かい毒ですぐにくずれていく。


 クマのつめ獅子ししきば

 ころもにつつまれた弱いイチョウが最期さいごに食われた時は食中毒をたよる。


 それじゃをたおせないか。


 だったらせめて味の感想だけでも教えてほしい。

 消化しょうかされる前に覚えておいてやるからさ。


 もう光は見えない。

 でもイチョウが落ちた場所は闇が支配するガケのおくじゃない。


 根をはってやるとちかってしずむ。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

味付けはイチョウを揚げた天ぷらよりも 釣ール @pixixy1O

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ