海面の日、水面の月

この語彙の多さ、静謐で真面目で味わい深い文章。そこにマンボウがぶち込まれるわけですから、読み手はギャップに引き寄せられます。文章もギャグのセンスも「うまい」なあと、何度思ったことでしょう。

それにしてもマンボウ弄りが酷くてお腹をかかえました。
すごく、面白かったです。

とにかく濃い小宇宙です。
旧いアパートの様相からはじまって、住民たちのクセの強さ、さらには単なる苦学生と自称する主人公の偏執的悪目立ち。そして訪問者の……。
突っ走るようなスピード感そのままに、一気に読み切ることをお勧めします。
『めぞん一刻』や『超人日記』あたりの挿話にも収まりそうなこんな話、少なくとも僕には好物です。

他人様の作品に感想を残した経験が無いのですが、したいと思わせる作品でした。

貧乏大学生である主人公は、彼女が欲しいと勢い勇み、合コンに出席した。
宴もたけなわになり、主人公が酒の勢いでマンボウに関しての大演説をぶち上げる。
しかし、興が冷めた同輩たちは、ひとり、またひとりと思い思いのつがいを作って宴席を後にする。
一人残された主人公は、涙ながらにボロ家へ帰った。
そして、次の日の朝、ノックで目を覚ますと、玄関前で浮いていたのは一本の“ボウ”であった。

まず、エピソードタイトルが卑怯である（誉め言葉）。
ボウで始まって何が出てくるのだろうと思ったら、素直に“ボウ”が出てきた。こんなことがあるか。

そもそも、この話は健全に性欲が強い大学生と、三億もの卵を産むと言われ…続きを読む