囲炉裏の前で聞くような怪異譚

読ませる語り口調の怪異譚です。

どこか切なく、愛を感じさせる「つららめ」。
残酷な人生を生きる女。彼女の願いを語る「白読」。
災禍の後に現れる「かのこ」と、ねじ曲がった伝承となった「禍ノ子」。
……etc.

実際に囲炉裏の前に語り手がいて、彼の声を聞いているような錯覚に陥ります。
怖いよりも悲しさや切なさが先にきて、何か侘しい気持ちになります。

佐々木喜善が柳田国男に語った遠野物語の原型も、このような形だったのでしょうか。
古くから現代にまで残った怪異譚を語るとこうなります、といった風情の本作。
是非、お読みください!

その他のおすすめレビュー

中今透さんの他のおすすめレビュー173