私は孤独な幼児じゃなかったの!
玉椿 沢
始点にして終点
私の創作は、始点も終点も子供時代にあります。
子供の頃は夢見がちな子供でした。他人に声をかけるのが苦手な。
医療関係者の両親は忙しく、祖父母に預けられて育った事が私の人格形成に大きく関わっていると思います。私立幼稚園に通わせてもらえた程度には裕福だった事と引き替えだったのでしょう。
でも小学校に上がる頃には両親も落ち着き、祖父母、両親の5人暮らしに。
問題は私立幼稚園から公立の小学校へ上がったため、幼なじみといえるような友達がいなかった事。
スポーツ少年団にも入っていましたが、どうも私はルールやチームの方針など、決められた中でパフォーマンスを発揮するのは得意だけれど、それら制約のないところで発揮できる何かを持っていないかったようです。
つまり近所に住んでいる同世代の子供と、何を話せば良いのか、何をすればいいのかが分からない子供でした。
そんな小学生時代、ゲームもマンガも好きだったけれど、私が最もよくやったのが、アクションフィギュアやぬいぐるみを使ったごっこ遊びです。
お祖母ちゃんにもらったクッキーの金属製の空き缶にしまっていた、1/12くらいのフィギュアやカプセルトイのぬいぐるみたち。
まず主役に抜擢しているフィギュアを手に取ります。
赤い羽根帽子に、ダイキャストやプラスチックの鎧を付け替えて、プラモでいうミキシングビルドのような事をして、半オリジナルに。
片腕が取れやすくなっているため、負傷しやすい設定でした。器用に人の間を渡り歩けないために理不尽な戦いへ身を投じる事が多く、報われないばかりでも、大して仲良くなる理由もない相手すら使命というだけで守れる男、と。
その日の決戦で腕を吹き飛ばされ、顔をゆがめつつ、こういうのです。
「姿形がどうなろうと構うものか! 俺の命は必勝の手段!」
矢矯を助けるために出てくるのは、
スーパーヒーロー戦隊の食玩ロボの剣を持たせる。本来はライオンの牙が意匠されていたけど、逆さまにして猛牛の角に改造した剣は、自分の中で最強の武器でした。
最強の剣を持つ彼は、矢矯とは似すぎているからこそ反りが合わず、共闘する事も刃を交える事も多い。
矢矯はなくなった腕越しに「お前は敵だと思ってた」
八頭は「敵だ」
「最大の敵だ。しかし、最高の味方でもいたいんだ。好敵手っていうのは、そういうもんだろう?」
二人の後ろには、駄菓子屋の棚に昔からあって忘れられていたようなトカゲやヘビ、その他ハ虫類のフィギュアと、その援軍を阻止し、更に矢矯と八頭へ援軍を送り込むために立ちはだかる女キャラを。ブロックで組んだ船の舵を取るのだから、海賊をイメージして組み替えたキャラ。
セコ。
世の中を斜めに見つつ、斜に構えて超然とした態度でリーダーを務められる女にいわせるセリフ。
「君を矢矯と八頭の所へ送るのが私の仕事だよ。だから君は戦うな」
一発逆転の手段こそもっていないけれど、知識と知恵を山ほど抱え、皆を支えられる。
セコに指揮されて、飛行機が飛んでいく。シルバーに青と黄色いラインで稲妻をイメージしたラインを入れた飛行機に乗せるのは、こちらも女エース。
頼りになる知性と力を持っているけど、私生活ではバカバカしい言動を取ってしまう、二枚目半の女。対人関係に臆病さを持っているけれど、エースカラーの戦闘機を自在に操り、
「私たちを戦わせろ!」
セコと晶の援護で、前線へ投入されるのは、トレーディングフィギュアの刀を持たせたファン・スーチン。
飄々とした態度を取る彼は、戦士である事は副業、本業は旅芸人と嘯きます。
「すすけた顔を笑顔に、赤茶けた大地を街に!」
ファンと共に戦場にやってくるぬいぐるみマスコットたち。ライオンヘッドのアズマ、ミニェットのでん、白ウサギのホシ。それぞれ人と共に生きるために姿を変えた雷神、鵺、ドラゴン。底なしの魔力で援護していく。
対する魔王は、モノトーンの鎧で、胸当てだけマゼンタにしてました。
ベクターフィールド。
隕石や竜巻など天変地異を操る魔王の一人。そのため軍隊では倒す事ができず、勝機は天変地異は範囲を個人に絞れないため、掻い潜ってくる決死の勇者が一対一で戦う事。
彼には彼の事情があり、誰にもいえない苦悩と苦痛を持っているが故に、例え不器用で報われなくとも、人と関われる矢矯や八頭に覚える感情がある。
「うらやましくて仕方がないぜ」
そんなベクターフィールドの裏側を知っている女がいる。
彼女が解き明かす、矢矯たちとベクターフィールドが血を流し合う事だけを望む狂人の存在――と、私の18畳の部屋で日々繰り広げられる荒唐無稽な、とりとめのないアクションストーリー。
1/12くらいのアクションフィギュアは、ひとつ2000円から3000円と、小学生には高価なオモチャだったけれど、私の孤独をわかっていたのか、祖父母が買い与えてくれたのを覚えています。
こんな各キャラクターの必殺技、人間関係などを小さなノートに纏め、名前も国籍もバラバラで、ごった煮としかいえないキャラたちが、私の周りにいてくれました。
今も、カクヨムに上げている物語で大暴れしてくれている「奴ら」です。
まだまだいっぱいいるキャラクターたちが孤独を埋めてくれていました。
そんな世界に入ってきた同級生もいましたが……、
私は侵略者にしてしまいました。
切っ掛けは、覚えていません。
何故、部屋に上げたのか。
何故、話したのか。
ただ同級生がいった言葉だけが、私の中に残っています。
「え? 何でそんな事してるの?」
「暗ッ」
「キモッ」
今は分かります。確かに暗いし、気持ち悪い。小学校の低学年ならば兎も角、4年生や5年生になってやっていた訳ですから。
しかし思うのです。
私の孤独を埋めてくれた、このキャラクターたちは、馬鹿にされるような存在なのか?
決して違う。
そして私が創作をする理由。
「この私の孤独な幼少期を支えてきたキャラクターたちが大暴れする物語が、世に名の通った出版社から私の名前入りで出版されたなら、奴らは、誰からも馬鹿にされるような存在ではなかったのだと証明できる」
私は孤独な幼児じゃなかったの! 玉椿 沢 @zero-sum
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