その名はエリザベス
「エンジニアは『知恵』の開発を目標としていました、」とCEOは語った。
「ここでいう『知恵』とは、単なる物覚えの良さを言うのではありません。なぜなら、人間の品性とは、IQの高さでは測れないものだからです。確かに、ある程度知能と品性は比例するでしょう、しかし頭が良くても人情に欠けることもある…」
「こちらにあるのは、その『知恵』が発生した、唯一のものです。ご覧ください…」
巨大なモニター類の立ち並ぶ部屋で、CEOはそれを覆い隠していた布を剥ぎ取った。
「今、『発生した』と言いましたね。知恵が発生するのですか?」
パドゥナが尋ねた。
そうです、とCEOは頷き、そして続けた。
「エンジニアはそれを信じていました。エンジニアは、これだけ複雑に発達したCPUは、擬似的な脳と呼べる機構を持っています。ですから、それが自然発生してもいいと考え、それに賭けました。」
そう答えながら、彼はモニター前のコンソールに触れた。
彼女は目覚めた。
その時、アンドロイドたちがどっと部屋へ雪崩れ込んできた。彼らは今の今までずっと、サイベリウス社の中へなんとか踏み込もうと外でもがいていたのである。
「助けてください!」
「教えてください、貴女の『知恵』とは何なのですか」
「私たちはそれが欲しい」
「僕たち、もう何が賢いだとか、何が正しいだとかで揉めるのは御免なんです」
「どうにかしてください!」
異口同音に訴え、すがる彼らを前に、エリザベスと名付けられた彼女はただ一言こう答えた。
「思いやりをもちなさい。」
AIへの手紙 Peridot @peridot2520
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