第4話 席替え

椎名さんとのデートから帰ってきた僕はまずお風呂に入ることにした。

「それにしても椎名さんは可愛かったなぁ」あの天使様とつい先程までデートしていたとは思えない。

「初めてのデートの相手が天使様だったのは嬉しいけどクラスメイトにバレないようにしないとな」悪いことをしている訳じゃないがそうしないと後々痛い目に合う気がする。

「今日は疲れてるから早く寝るか!」別に椎名さんといることが辛いわけじゃない。むしろ楽しいんだ。

「明日どんな顔して学校に行けばいいんだ」唯一無二の救いは椎名さんとクラスが別なことだな。

「今日は寝るか」明日は朝早く起きなければならないので寝ることにした。

翌日、僕は早く目が覚めた。

昨日のこともあり今日は椎名さんと顔合わせられるか心配なところではあるが早めに学校に行こう。

教室に入って席に着くと男子から声がかけられた。

「なぁ、相澤。昨日椎名さんとデートしてたってほんとか?」

「誰から聞いたの?僕みたいなモブが天使の椎名さんとデートなんて出来るわけないじゃん」

「そうだよな!やっぱりお前の見間違いだよ日下部」

「そうかぁ、あれは絶対相澤だと思ってたんけど違ってたか。ごめんな!相澤」

「全然大丈夫だよ」

「ありがと!また今度話そうな」と言って自分の席に戻っていった。

そうしていると先生が教室に来た。

「席につけ!今日は急だが席替えをする!教卓の前に来てくじを引け!」今回はくじ引きで決めるやり方だ。

「よっしゃあ!席替えだ!」

「こらそこ!静かにしろ」

「はーい」

「僕はーー今と変わんないかぁ」

「おはよう、ともきくん」隣の席の人から声をかけられた。

「あたし、小林春菜!よろしくね」

「よろしく、小林さん」

「小林さんって、同い年なんだから、はるなでいいよ」

「わかったよ、、はるなさん」

「さんもいらないよ」

「さすがに初対面で呼び捨てはちょっとな」

「えぇ、さん付けってぎこちなくない?」

「わかった、はるなって呼ぶよ」

「うんうん、いいよ!ともき」

「よろしく!はるな」こうして高校2年になってからまた女子と仲良くなった。

「ともきは好きな人とかいるの?」

「どうしてそんなこと聞くの?」

「気になってさ」

「今まで彼女いたことも無いし、好きな人が出来たこともないかな。そういうのとは無縁の世界で生きてきたからね」これは事実だ。小さい頃から目立たない僕に女友達が出来るわけない。

「そっか、じゃあなんで昨日の放課後椎名さんとデートしてたの?」

「またその話?そもそも椎名さんと僕がデート出来るわけないじゃないか」

「普通に考えればそうよね!でもあたしは見たのよ。あなたが朝、登校中に椎名さんと話してるところをね」

「それこそ見間違いじゃないの?」

「ちゃんと写真もあるわよ?」

「わかった。認めるよ!それで僕に何をして欲しいの?」

「どういうこと?」

「何かを要求するために写真とったんでしょ?」

「そうよ、あなた椎名さんと付き合いなさい」隣人に言われたことはとてつもないことだった。

「は!?僕なんかが付き合えるはずないだろ」

「そんなの付き合ってみないと分からないじゃない」

「それに、大事なこと忘れてるよ」

「大事なこと?」

「椎名さんの気持ちだ。とにかく今日は僕早退するからまたね」

「体調悪くないのに帰るの?」

「実は、頭が痛くて」

「そうなんだね!お大事に」こうして僕は学校から家に帰れるーーはずだった。

しかし。

「相澤さん、お身体悪いんですか?」後ろから女子生徒の声が聞こえた。

「はい。そうなんですよ!調子が悪くて」

「そうなのですね!それでは気をつけて帰ってください」なんとか追求されずに済んだな。そう僕が今日早退するのには明確な理由がある。それは帰り道色々聞かれるであろう椎名さんからの追求を避けるためだ。体調不良だったのは本当のことだが早く椎名さんとの誤解を解かないとな。だがその機会はすぐにやってくる。

ーーピンポーンという音がした。

インターホンの音だ。

「こんばんは相澤さん」

「こんばんは椎名さん」

「もしかして、なんで私がここに来たのかわかってませんね?」

「分からないです。なんで来たの?」

「それは、昨日の朝あなたとクラスメイトの会話を聞いてしまったからです」

「あぁ、そのことか」

「心当たりはあるんですね」

「僕はただクラスメイトと話してただけなんだ!今日席替えがあってその隣の席の人と話してたんだよ」

「そうなのですね!わかりました」そういって椎名さんは帰って行った。

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