【 5 】

 俺たち四人は皆、一瞬沈黙した。

 数秒余りの間をはさんでから、ようやく俺は我に返って、精霊に問いただした。


「どっ、どういうことですかグラディス!? 解約の条件は満たしているはずですが……」


「いやいや全然あかんやん。だって全員そろってへんやんか、キミんとこのパーティーメンバー」


 精霊の回答にまたしても驚き、俺たちは深刻な当惑を覚えた。

 咄嗟とっさにグラディスの指摘を理解できず、各々互いに視線を交わす。

 すると誓いの精霊は、あきれたように溜め息をいた。



「あのなあキミ、パーティーメンバー全員いうのは、魔王城での戦闘に参加した仲間だけちゃうねんで。キミんとこの一行には、当時冒険の場面に応じてパーティーを出入りする仲間も何人かおったやろ?」



 …………。


 補足の説明で、合点がいった。

 そうだ、そうだった。前世の俺たちは魔王城や古代遺跡のような閉鎖的な場所では、少数精鋭のパーティーを組んでいた。大人数だと乱戦状況が発生しやすく、逆に戦いにくいからだ。


 だが実際は四人だけでなく、街の酒場で待機している仲間もいて、状況次第でメンバーを入れ替えながら旅をしていた。しかも俺以外はやはり全員女の子。

 魔物使いのリリカ、商人のセアラ、盗賊のミミとかもいたなあ……。

 しかし彼女らは魔王城崩落の際、時空の狭間はざままれていないはずだが、こちらの世界に転生しているのだろうか。


 とにかくいずれにしろグラディスの契約を解除するには、完全なハーレムパーティーを再結成せねばならないらしい! 

 ていうか契約するときは四人でいいのに、解約時には他の仲間も含む全員で申請しなきゃ受け付けないなんて、悪質なサブスク並みに手続き厄介じゃねぇか。



「んじゃまあ、そういうことやから今回は解約申請に応じられへんわ。ほな、またなー」


 グラディスがそう言うと、みるみる石膏像からきらめきが消失していく。

 そうして、精霊の気配も消え去り、美術準備室を静寂が包んだ。




 さらにまた間を置いてから、女の子たちを代表するように有紗が口を開いた。


「……もし今ここにいないパーティメンバーも全員揃ったら、慧ちゃんを好きな女の子は合計で何人になるのかしらね」


 俺は、恐る恐る周囲を見回し、三人の女の子たちの様子をうかがった。

 有紗も芽琉も華恋も、光の消えた瞳でこちらを見詰め、微笑んでいる。

 冷たい汗が背筋を伝っていた。






<誓いの勇者のハーレムパーティー、魔王討伐後に転生したら学園ラブコメはじまった。・了>

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誓いの勇者のハーレムパーティー、魔王討伐後に転生したら学園ラブコメはじまった。 坂神京平 @sakagami

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