第3話「キツネの神さまと冒険者パーティを結成する」
「こちらは
「わかった。仕方ないな」
父上はうなずいた。
俺はハツホさまを部屋へと案内した。
ナーランド伯爵家は
使用人が
「ハツホさまはこの部屋を使ってください」
「わーい。ベッドじゃ! これが
ハツホさまはベッドにダイブした。
「いや、そういう話じゃなかろ!?」
「なにがですか?」
「なんでわらわが
「
「それにしても話が早すぎじゃろ!?
「事情があるんです」
「事情?」
「うちにはすごい借金があるんですよ」
俺は
「俺はその借金のカタに
「想像以上に重いのじゃ!!」
「俺もなんとかしようと思ってるんですけどね……」
ナーランド
しかも、それを返すあてがない。
使用人たちは、次の就職先を
残っているのは年老いた者や、行く当てのない者だけだ。
領地からの
今は
そんな状態のうちに『金はあるけど歴史の浅い
その名は、ネイデル男爵家。
男爵令嬢に子どもが生まれれば、その子は伯爵家と縁続きになる。
ナーランド伯爵家の
実質的に伯爵家はネイデル男爵家が支配することになる。
男爵家としては、割のいい
「最悪じゃ!! お主はそれでよいのか!?」
「嫌ですよ」
「じゃよなあ……」
「だから、冒険者ギルドに行く予定だったんです」
「冒険者ギルドとはなんじゃ?」
「剣や魔法が使える人間が、仕事をもらうための場所です。魔物と戦ったり、ダンジョンを探索することで
「なるほどの。お主は冒険者をすることで、借金を返すつもりなのじゃな」
「
「政略結婚までの期限は?」
「……あと1年ってところですね」
「お主は、政略結婚では幸せになれぬのじゃな?」
「前世の記憶を取り戻すまでは……仕方ないかなとも思ってましたけど」
前世の俺は、ずっと
両親を亡くして、伯父さんが病気になって、
ついでに、俺も死んでしまった。
そのことを思い出したら、腹が立ってきたんだ。
「俺は……今世では
「うむ。よく言うた!」
ハツホさまは満足そうな顔で、
「『家族のために我慢する』などと抜かしたら『自分を大事にせい!』と
「ですよねー」
「我も協力するのじゃ。大船に乗った気でおるがよい!」
「それではうかがいますけど、ハツホさまは武器とかは使えますか?」
「使ったことないのじゃ」
「手から炎を出したり?」
「
「戦うのは……?」
「戦ったことないのぅ。我はもともと、お使い狐じゃったから」
ハツホさまは
上位の神さま同士を繋いだり、人間の願いを神さまに届けるのが役目だったそうだ。
ということは……。
「ハツホさまは
「前向きじゃなお主!」
ハツホさまが目を見開き、狐耳がぴん、と伸びた。
「『わらわって役立たずかも』と落ち込むところじゃったぞ!?」
「大丈夫です。戦闘は俺が担当しますから」
「わらわはお主を守ってやりたいのじゃが? 役目がないとさみしいのじゃが!?」
「ハツホさまは神さまなんですから。そこにいてくれるだけでいいんです」
もともと、俺はひとりでクエストをやるつもりだったからな。
お金がもうかるようなクエストなんて、
誰にも知られずに命を落とすことも覚悟していたんだ。
でも、ハツホさまがいるなら話は違う。
ハツホさまは神さまだ。
俺になにかあっても無事に脱出して、ギルドに事情を知らせてくれるだろう。家族にも連絡してくれるはず。それだけで十分だ。
「……お主、なにか覚悟を決めておらん?」
「いませんよ?」
「自分を大切にするって言ったんじゃよなあ?」
「大切にします」
もちろん、大切にする。
『自由に生きる』『
そのためならなんでもする。
どうせ一回死んでるんだ。やれることはなんでもやろう。
そんなことを考えながら、俺は冒険者ギルドに行く準備をはじめるのだった。
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