魔法や魔獣が世界に広がる、ストレートな異世界ファンタジー作品です。
とは言え堅苦しい訳ではなく、むしろ読み易いです。
キャラクターについてですが、世間に広まっている魔法とは、別系統の異能を主人公は持っています。
割とチート系かと思いきや、魔獣や魔人といった敵はそれ以上の能力で迎え撃ってくるので、苦戦を強いられると言いますか、一筋縄ではいかない展開が広げられています。
その描写が丁寧に描かれるので、かなり熱の入ったバトル展開と言えます。
負傷の描写がやけにリアルで、グロとまではいかないものの、思わずこちらが悲鳴を上げたくなる場面さえあります。
この迫力ある異能バトルこそが、作品の一番の見所ではないでしょうか。
シナリオも王道で、良い意味で取っ付きやすいですね。
師匠となる方に戦い方を教わり、ヒロインと出逢い、仲間を増やしていく。
襲いかかる敵と死闘を重ね、真実に触れていく王道的なお話です。
ですが、ただ王道なだけではありません。
時に物語の中で、悲劇的な展開が出てきます。
そのシーンは、無情なほどあっさりと訪れるのですが、そこがやけに現実的と申しましょうか。
必ずしも、大事な人の危急の事態に居合わせられる訳じゃ無いよなあと、考えさせられます。
非常に上手い展開でした。
王道でありながら、良い意味で外すところは外した、インパクトを与えるのが上手い作品でした。
記憶喪失の主人公テルの目線から見ているからこそ、彼等のいる世界の輪郭が少しずつ見えていきます。
徐々に世界が広がっていくような感覚は、とても新鮮です。
御作品のキャッチコピーにもあります、『チート能力はあるけど、無双もスローライフも許してくれなそうです』……本当にその通りで、作中でのテルは幾多の困難にぶつかり、時には失われてしまった命に嘆きながらも、大切な友人、仲間達と前へ進んでいきます。
そしてテルを始めとした個性豊かな登場人物達はキャラクターが立っていて、作者様の技巧の高さを感じます。
丁寧で厚みのある文体で描かれる戦闘シーンには、死と隣り合わせの緊迫感があり、手に汗握ることでしょう。
しっかりと読ませて下さいます、骨太なダークファンタジー……これは読む手が止まらなくなること、間違いありません!
謎いっぱいの冒頭、少しずつ増えていく仲間、広がっていく世界。そして時々喪失。
「これから主人公はどうなるんだ? どうするんだ?」とワクワクしながら読み進めました。
腰を据えて味わう物語であり、サクサク消費するタイプではないと感じます。
ですがご安心を。文章の滑らかさも相まってスルスルと楽しく読むことができます。
序盤はピンチも多く、特に戦闘では手に汗握るシーンも多いです。
努力を重ね、自分の頭で考えて動く主人公。
この彼が「いずれ主人公最強」になる――一粒で二度美味しいとはまさにこのことです。
一体どんなふうに最強へのし上がっていくのか。
そこにどんな物語が紡がれるのか。
これからも見逃せない、そんな作品です。
最後に推しを述べさせていただきます。
どのキャラも味がありますが、やはりリベリオ!!
適当だけど強く頼れる、そしてどこか影も持つ男!
ぜひぜひ、この世界に足を踏み入れてみてください。
まず間違いなく、名作の部類に入る作品です。
物語の主人公は記憶を無くした少年であり、異世界を旅していくという設定はありふれているでしょう。すごい異能や可愛いヒロインも登場するとなればなおさらです。
しかし、この物語は毛色が違います。
記憶はそう簡単に戻ることはなく、主人公に与えられた異能は強いですが、この世界にはもっと強い敵がゴロゴロしています。
そう、これは異世界で自分が生きていくために足掻いていく物語なのです。
見知らぬ土地で、知識も記憶もない少年は、一人では生きていけません。
それでも、助けてくれる人との間に紡がれる確かな絆があります。
ヒロインは主人公に冷たく接してきますが、それにもしっかりとした理由があります。
主人公は、そんな人々のなかで葛藤し、思い悩み、やがて自分だけの答えを出していきます。
このタイプの主人公にしては珍しく、自立しているのです。
そして、素晴らしいのは戦闘描写です。
主人公の出会う敵の数々は、どれも強敵でおぞましく、ダークファンタジーに相応しい醜悪な敵たち。
仲間と力を合わせて、異能の力を存分に使って、やっとのことで命からがら生き延びる……そんな戦闘が続きます。サクッとした無双ではありません。
だからこそ熱くなれる。
この物語はそういう人に向いています。
ぜひ一読してみてください。
謎が謎を呼ぶ展開に、初めは困惑するでしょう。
しかし、重厚な世界観にあなたはいつの間にか虜になっているはず。
第一章を読み終われば、私がここまで本作を薦める理由も自ずと分かるはずです。
最高でした。