八朔の果実。その白さより尚、苦し事。

時は、昭和の初めの頃。
颶風一過の村は、土砂崩れに見舞われる。
世話になった兄貴分に会いに、一人の男が
被災した村を訪う。
 追い剥ぎ坂、八朔の白い華、戒告
神の御使 義兄弟、苦い果実、 そして。

これは【八朔日の贄】という傑作ホラー
作品と、土地を同じくして書かれた短編。

朔日信仰 の、半ば閉ざされたその村では
皆、過剰な迄に 謝罪 の言葉を
繰り返す。
不審に思いながらも無頼の男は、嘗て
世話になった兄貴分に邂逅するのだが…。

八朔の美しい白い華と、馨しい香。
 苦い果実。

鋭く抉るような、それでいて淡々とした
確かな筆致で描かれる『物語』は、読んだ
者に感動と余韻を齎す。本編の方は
現代に時間軸を置いて展開して行くが、
これがまた、物凄く衝撃的で魅力に溢れる
物語なのだ。

       読まぬ手はない。