様々な人々の其々の闘い、その果てにあるものは。

…これは、読んでいて震える程の物語だ。
兎に角、それは読めばわかる。
何故、この物語を読んでいなかったのか。
そして読み終わった事にも、作者の近況が
出て来てもまだ余韻に浸り切っていた。

ジャンルで言えば、SF小説になるのだろうが、決してそれだけでは収まらない壮大な
スケールで話は進む。一方、職責や組織、
そして現場の地理的な状況諸々に関しては
恐ろしく精緻に描かれており、否が応でも
臨場感を味わうだろう。
SFではあるが、パニックホラーの表現に
於いても周到さが光る。ひたひたと恐怖に
脅かされる日常。人々の心理描写も又
読み手の呼吸を奪う。

そして、決して忘れてはならないのが、
宇宙から齎された『脅威』に立ち向かう
無辜の人々を描いた重厚な人間ドラマでもある、という事。この作品の素晴らしさは
とても言葉にして表す事は無粋と思う。

兎に角、読んでみて欲しい。

群像劇というには整然として、SFとしては
深と心に響く。ホラー小説の側面はあれど
感動の涙を誘う。そして最後はきっと
清々と心が凪ぐのを感じるだろう。

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