されば、我々は何と心強い事であろうか

K.618 それは楽曲を表す。静謐な中にも
毅然とした強さと希望を秘めたこの曲は、
カトリックの讃美歌であり、稀代の作曲家
W.A.モーツァルトの最高傑作の一つだ。
 この曲を背景にしたこの『物語』は、
広い世界の中のとても小さな、そして余り
目につく事のないであろう辛い 世界 を
敢えて描く。余計な情報は削ぎ落とし、
象徴的に、物語を生きる者たちの尊く
控えめな 祈り を描いている。
思春期の女生徒達の心の機微と先駈である青年の挫折。彼等の邂逅は、読む者にも 
祈りを齎すだろう。

そこに、この物語の奥行を見る。

私たちは、いずれ必ず死を迎える。
但し、私たちには小さな歴史の連綿と
物語とがある。


K.618 Ave verum corpus