仮想と現実との昏い礀で 静かに光る星々の夢
- ★★★ Excellent!!!
これ程までに心を揺さぶられる
空想科学小説に巡り合う事は、そうそう
ないだろう。初めから終わりまでを通して
まるで、赤い砂嵐の中に立つが如くに
翻弄される。
静謐で、どこか無機質な世界の中で繰り
広げられる 彼等 の、至極ありふれて
いる筈の日常には何処か 違和感 が
あり、決定的な 断層 を垣間見る。
地球によく似た星の、物語。
仮想と現実が。
それらは、決して交わる事はないと知る。
けれども嘗ての鮮やかな 記憶 と
想い は、確かに其処に存在している。
激しい砂嵐に蹂躙されても尚、絶対に
損なわれる事はないのだ。
尤も、これは希望と再生の物語ではない。
そんな容易い言葉では決して言い表せない
深く静謐で、激しい物語だ。
仮想と現実、過去と未来、希望と絶望。
本来、対比するものが曖昧に溶け混ざり
美しく光り揺蕩う。
暗い空に輝く星々の様に瞬いては、
遠い彼方より時を揺らがせ齎される。
この感動を、どう表せば良いのだろうか。
言葉で伝える事すら狭匙である。