第5話 最後の報告

 私達はレームを出るとあるアパートにきていた。そこは、古い感じのアパート。外壁が所々はがれているし、階段は錆びついている。


 こんなところに警察の人が住んでいるなんて不思議。給料いっぱいもらってるでしょうに。

 

「本当に入れるんですか?」

 

「内緒にしてくださいね? 捕まったら、会社クビになっちゃうんで」

 

「言いませんよ。お願いします」

 

 ドアノブの前にしゃがみ込むと七つ道具を出して鍵穴に道具を突っ込んでカチャカチャと上へ下へと動かす。カチャリと鍵の開いた音が響く。


 この家の住人は現在警察署に缶詰なんだって。真島さんを犯人にしようとやっきになっているというわけ。でも、それも今日まで。

 

 扉を開けて中に入ると色んな女性の写真が壁一面に張られていた。真島さんの奥さんの写真、被害女性の写真。私の写真まであった。背中がムズムズして気持ちが悪い。

 

「あった! これだ。由紀のカバン」

 

 カバンの横には血痕が付着している。自分の血がついてしまったため、持ち去ったのだろう。それをおかしくないことかのように捜査をかく乱させていたということだ。


 真島さんは部屋の壁とアパートの様子を写真に収め、鍵を閉めて立ち去った。この証拠をどうするかは真島さんに任せよう。私にフォローできるのはここまでだ。

 

 それから数日。レーム社へと出社したけど、誰もお客さんは来なかった。でも、嬉しいことがあった。色々とあったけど、なんと初任給が入ったのだ。ちゃんと契約通りのお給料だった。


 レームを使うために給料はいらないからと言っていたからどうなることかと思ってたの。社長は真島さんのためだったからいいわと言って許してくれた。あれからどうなったのかは聞いていない。

 

「あのー。急なんですけど、今日いけますか?」

 

 ツーブロックで髪をオールバックにしたダンディなおじ様だった。ピチッとしたスーツがきまっている。こういうおじ様だと私もときめいちゃうかもなぁと、そんなことを思いながら奥へと案内する。

 

「あら? お綺麗になりましたね。真島様。本日はご利用料金のお支払ですか?」

 

 社長のその言葉で目が飛び出るかと思ったわ。この人が、あの真島さんだということに衝撃を受けた。胸が高鳴っている。こんなに素敵な人だったのね。


 だったら、あの奥さんも納得だわ。という失礼なことを思いながら後ろから見つめる。

 

「捜査費用として、経費が出ました。そして、署内の膿を取り除いたということでボーナスも出ました。この度は本当にありがとうございます。これが利用料です」

 

 また分厚い封筒を社長へと渡している。あれ、一体いくら入っているんだろうと凄くきになるが、金額を聞くなんてできない。体を傾け、伸びて様子を見ていると急に真島さんが振り返った。

 

「河野さん、あなたのおかげで俺は救われました。ありがとうございました。これ、受け取ってください」


「えっ?」

 

 真島さんの手には分厚い封筒が握られている。私に受け取れと。それはありがたい。

 

「ありがとうございます。じゃあ……社長。これで、真島さんの奥さんと繋いでもらえますか?」

 

「ちょっ! いいんですか?」

 

「はい! 真島さんの奥さんへ、報告しましょう!」

 

 真島さんの奥さんは涙を流して喜んでくれた。犯人が捕まってくれてよかったと。私も凄く感謝された。こんなに感謝されるなんて。

 

 私、この仕事天職かも。

 

「ここって、レームという会社ですか?」

 

「そうです! 奥へどうぞ!」

 

 今日も私は、この不思議な会社で受付兼フォローをしている。

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天と繋がるアプリ『レーム』 ゆる弥 @yuruya

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