ゲームが特別な遊びだった世代の人たちへ
- ★★★ Excellent!!!
フルダイブ型VRMMOゲームを主題に、それで遊ぶゲーム同好会の日々をつづる物語です。
人型兵器をロボットと呼ばず、メカと呼ぶところに作者のこだわりを感じます。冒頭から語られるコックピットの描写やゲームの展開も同様に、メカアクションに対する愛情にあふれています。
ゲームを題材にした小説は数あれど、ゲーム内での出来事をメインとせず、ゲーム同好会の日常や、ゲームと地続きになっている登場人物の人間関係を描いている物語は非常に珍しいです。
同好会メンバーも、キャッチコピー通り「アホしかいない」は言いえて妙。
彼氏がいないメンバーを「さもしい女の集まり」と自虐的にいう部長の晶。
主人公の惇に対し、「やおい穴にココナッツぶちこむぞ」といえるくらいアドバンテージを持つ従姉の弥紀。
留学生で、ゲームも得意だけれど運動もできるけど、バイト先で万引き犯を捕まえても「オアイソお願いします」と怪しい日本語を使うサム。
顧問の高浜も妹の晶には弱い等、人間関係も軽妙で面白い。
でもゲーム内では激しく、悪意や敵意を向けられる展開もあり、同じようにゲーム内で知り合ったクォールとの一戦は、互いにゲームを楽しんでいることがありありと浮かぶくらい濃密な展開も。
振り返り私たちの現実では、もう大抵の人がスマホを持ち、隙間時間があればソシャゲをする、動画配信でも5分もあれば終わるFPSをゲーム配信者が繰り返していると、ゲームは数ある遊びの中の一つになっています。
そんな中で、90年代や00年代の「日曜日にはゲームソフトのチラシが入っていた頃」のゲームは特別な遊びだった頃を思い出させる、ノスタルジックさと真新しさがある傑作です。