空白に書き込まれた“朱”。それは、呪いの言葉となる。

その空白に書かれた文字を見た何も知らぬ者たちは、一体何を思うのか。
困惑し、嘲笑し、歓喜し、きっと見た者全員を前へと進ませる筈だ。
が、その言葉の中には、強い憎悪と悲しみが込められている。
そしてその意味を知ったなら、そこへ書かれている文字に、書いた者の意図に、背筋が凍ることになるだろう。

もし、世界が男にもう少しだけ優しかったなら。
もし、空白になる前にその看板を掲げた者が隣にいたなら。
きっと、こんなことにはならなかっただろうに。

その空白には呪いの言葉が書かれている。
いったいその言葉は、これから何人の命を奪うことになるのだろう。
しかし悪意ありきで空白を塗りつぶしたその男の心情を、読み終えて今、どうしても私は共感せずにはいられない。

その他のおすすめレビュー

黒ーんさんの他のおすすめレビュー22