第15話 終わりに、と、予告

 というわけで、ホルンについていろいろと書いてきました。


 私がホルンという楽器を意識したのは、たぶん幼稚園に通っていたころのことだと思います。

 昔のことなので、あんまり記憶がたしかではありませんが。


 そのころの私は天気予報を見るのが好きなへんな子どもでした。

 で、当時は、NHK総合で、八時ちょうどまでの一分間、短い天気予報を放送していました。

 その一分間天気予報のBGMの最後のほうで鳴り響く音について、何気なく「これって何の音なの?」と父にきくと、父が「ホルンという楽器だ」と答えてくれました。

 それからまたしばらく経って、やっぱりテレビの何かの番組でオーケストラが映り、そのとき、父が「この楽器がホルン」と教えてくれました。

 幼い息子が前に質問したことをよく覚えてくれていたな、と、いまになって感心しますが。

 そのころは、楽器のことなんか何も知らず、したがって「円く巻いている」というのがホルンの特徴だとも知らなかったのですが、ともかく、この「円い、金色のきらきらした楽器」がホルンなんだ、そして、そのホルンは、小さい子どもにも印象に残る音が出るらしい、ということが印象に残りました。


 天気予報好きなそのへんな子どもが、半世紀ほど経った後に、いきなり「気象予報士試験を受ける!」などと言い出して、ホルンの音を知るきっかけとなったNHK総合で気象解説を担当している気象予報士さんの本を読んだり、締切間際に出願しようと思ったら顔写真を撮っていなかったことに気づいて受験を見送ったりすることになるとは。

 でも勉強はしてますよ!

 ……というのは、ここでは、どうでもいいとして。


 ところが、私は、小学校では音楽が超不得意科目だったこともあり、その後、小学校・中学校のころに楽器に興味を持つことはほとんどありませんでした。

 その後の紆余曲折については、今回は省略することにして。


 就職した後、職場にアマチュアオーケストラと関係のあるひとがいて(そのひと自身は奏者ではありませんでしたが)、演奏会に招待してもらいました。

 その演奏を聴きに行って、とても印象に残ったことが……。

 「何? このホルンのダメさ加減!」

ということでした。

 ほかの楽器も、もっと耳の肥えたひとが聴けばいろいろと問題があったのかも知れませんが、私のようなしろうとからすれば、普通に音を奏でています。

 ホルンだけ、明らかに違う音を吹くし、音がふらふら揺れて安定しない。フレーズの途中で不自然にやめてしまうこともある。

 つまり、しろうとでもわかるひどい演奏。

 ホルンが全体の足を引っぱっています。

 「何、これ?」と、そのときは思いました。

 で、後日、職場の別の人に「あのオーケストラの演奏、聴きに行ったらしいけど、どうだった?」ときかれ、「ほかはよかったけどホルンがダメダメだった」と私が言うと、「そりゃそうだよ、ホルン難しいから」と言われて、ああ、そうだったのか、ホルンって難しいのか、ということを感じたわけです。

 このできごとがあってから、ホルンのことが再び気になるようになりました。


 それからまた月日が流れて、なぜか旅先の石巻の映画館で『リズと青い鳥』を観て、自分も吹奏楽のお話を書きたくなりました(『リズと青い鳥』は高校吹奏楽部のオーボエ奏者とフルート奏者の物語で、ホルンはほとんど出て来ませんが)。

 このころまでの私は、クラシック音楽にもある程度の興味は持っていましたが、弦楽合奏至上主義者で、弦楽の入らない吹奏楽にはまったく関心がなかったのです。

 それで、この時期から吹奏楽についても調べるようになりました……というより、『リズと青い鳥』の制作会社の京都アニメーション(京アニ)の関連動画を観ているといろんな知識が身について、自分でもネットで調べるようになった、という流れです。


 そういう経緯で書いた高校のマーチングバンド部の物語で、「カクヨム」に発表したのが

 『遥か昔のエジプト精神』

https://kakuyomu.jp/works/16817139556810135815

です。

 ただ、この物語には、楽器を演奏する場面はほとんどありません。


 それで、この高校マーチングバンド物語からの「スピンオフ」として、中学校マーチングバンドの物語を書くことを思いつきました。

 あまりにホルンが上手すぎて、「ホルンが難しいなんて、練習しないやつらの言いわけだ!」と豪語してしまうホルン奏者がいて、その娘。

 自分も中学校のマーチングバンドでホルンを吹いている少女の物語です。


 この物語を「カクヨム」で公開するのはもう少し先にしようと思っていました。

 しかし。

 「ホルン部」の活動が始まりましたので、この機会を逃さず、公開することにしました。

 最初は短編から始める予定でしたが、もう、いきなり長編から行ってしまおう、と。


 ただ、問題があって。

 まだ書き終わっていないのです。

 これまでも、後ろのほうを書いて、前のほうを修正する、ということが何回かあったのですが、もうこれで初めのほうは確定、と見切って、明日のこの時間(12月9日午後8時)から連載を開始することにします。


 何文字あるか数えたことはありませんが、一年を超えるかなりの長期連載になるのは確実です。

 何とぞよろしくお願いします。


 (終)

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ホルン! 清瀬 六朗 @r_kiyose

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